国庫補助金原資の基金、20兆円超保有 会計検査院調査で初めて判明

国庫補助金を主な原資に積み立てられた基金について会計検査院が調べたところ、2023年度末時点で254基金が設置され、総額20兆円超を保有していることが判明した。法人に設置された基金の保有額は4年間で約8倍に急増。一部で不適切な管理実態も確認された。検査院は、使用見込みのない資金の国庫返納などを求めている。
基金法人や独立行政法人、都道府県などに設置された基金の保有額の全体像が明らかになるのは初めて。基金は複数年度にわたる事業の財源を確保する仕組みで、新型コロナウイルス禍などを背景に国の関連予算が増額されてきた。一方、政府の行政改革推進会議などでは適正化が議論されており、検査院は今回、参議院の要請で調査を行った。
その結果、23年度末時点の法人設置基金は191基金、保有額は計18兆7969億円で、19年度末の162基金、計2兆3780億円から大幅増となった。都道府県の基金は23年度末時点で63基金(同一基金を都道府県ごとにカウントすると869基金)、計1兆6188億円を保有。双方を合わせた保有総額は20兆4157億円に上った。
所管府省庁別の保有額は経済産業省が13兆3612億円と突出して多く、脱炭素化関連の「グリーンイノベーション基金」が254基金で唯一、2兆円を超え、中小企業支援関連など1兆円超も5基金あった。
検査院は、4基金について過去の執行状況や現在の保有額などを「十分に考慮せずに積み増し額を算定していた」と指摘。例えば子育て支援関連の「安心こども基金」(こども家庭庁所管)は、21都道府県に計301億円が交付されながら、24年度までの使用額は54億円にとどまったという。
また、36基金は事業見込み額に対する実際の事業費と見込み額との差額の割合を示す乖離(かいり)率が75%以上だったことも判明。検査院は「事業費が見込み額に比べ大幅に低い」として、必要に応じて基金規模の見直しを検討するよう求めた。
財政や基金に詳しい白大の藤井亮二教授は「見えていなかった全体像が見え、どこにどれだけの財政資金が滞留しているかの確認につながる。行政自身が規模の一部を公表したことはあるが、今回は財政の監督機関が第三者の立場で客観的に示し、透明性が増した」と調査結果を評価する。
そのうえで「20兆円という規模の大小は一概に評価できない」としつつ、「新型コロナ禍後も高止まりし、『とりあえず』で必要以上の資金を積み立てているのではないか」と指摘。「通常の予算編成であれば財務省の査定が入るが、基金なら白紙委任で政府に数千億円の予算が入る。実際に使われるのか、毎年チェックされるものでもなく、国民の目が届きにくい」と話した。【山田豊】

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