海水浴で17歳死亡 障害者施設の運営法人に改善指導 群馬県

群馬県邑楽町の障害児支援施設に通所していた男子高校生(当時17歳)が海水浴の行事で体調を崩して死亡した事故について、県が施設を運営する社会福祉法人への調査を踏まえ、指導を行ったことが分かった。県は事故の要因として「病院への搬送の遅れ」を挙げ、海水の誤嚥(ごえん)対策が話し合われていなかった点についても「リスク管理がされていなかった」と指摘した。【湯浅聖一】
県の調査結果などによると、事故は2024年8月に実施した「宿泊学習」で新潟県に海水浴に出かけた際に発生。帰路の車内で、生徒は呼吸が弱くなって嘔吐(おうと)し、呼吸が確認できなくなった。施設側は救急要請をして心肺蘇生を行い、生徒は入院して集中治療室に入ったが、亡くなった。死因は、海水などの誤嚥による溺水や肺水腫、持病などが複合したと診断された。
関係者によると、この施設は、邑楽町の放課後等デイサービス(放デイ)。県は放デイなど障害児通所支援事業の指定をする立場であり、こども家庭庁の通知で死亡事故の報告や再発防止を求められていることから、町とともに調査に着手した。
県は施設側から報告書の提出を受け、24年12月、訪問調査を行った。施設側は、生徒の様子について「唇が青いと気づいた職員が浜に上げた。別の職員が『体調が悪そうだ』といい、水道で体を洗っている際には足がガクガクしていた」と説明。海水浴から帰宅する車中では「このまま帰宅させられると思った」といい、「(病院に連れて行くのは)不要との判断だった。軽度の熱中症と見立てていた」などと報告していた。
誤嚥対策、医療機関との連携不足
県は25年2月、外部委員会による調査報告書を受け、5月に改善指導を実施。事故の要因として「体調不良が認められてから、容態が急変し意識不明に至るまで2時間程度経過している。早期に搬送しなかったことが重症化の要因となった可能性がある」と指摘した。海水浴の事前会議では熱中症やクラゲの対策が中心となり、海水の誤嚥対策が話し合われていなかった点、持病のリスク評価ができていなかった点も要因に挙げた。
事業者の対応として、新潟県から群馬県に戻る判断をしたのは「意識不明になる直前までは、不安定ながらも自分で歩き、呼名にも返事をしていた」として「重大な瑕疵(かし)があるとは言えない」と認定。一方で「安全を優先し、病院への搬送を早急に判断する必要があった」とも指摘した。
さらに、医療機関との未調整などが「病院を受診する判断に至らなかった原因の一つ」と問題視。児童福祉法の省令は、障害児に病状の急変が生じた場合、速やかに医療機関への連絡を行うなど必要な措置を講じなければならないと定めており、改善を求めた。
毎日新聞は、施設が行った保護者説明会の資料や議事録を入手した。これらによると、新潟県の海水浴場から、車で約3時間かかる群馬県の施設に戻るよう指示したのは施設長だった。保護者には電話をしたが、かかりつけ医には連絡せず、看護師資格など専門的な知識を持った職員は引率していなかった。
施設側は、参加者の体調不良に備えて事前に付近の医療機関を調べていたものの、受け入れの是非などを直接確認していなかった。別の放デイ関係者は「障害が重い場合、受診を断られることもある。医療機関との連携は常に必要だ」と解説する。
遺族は「病院に行ってくれれば助かったかもしれない」との思いがあると話す。
県によると、法人は指導を受けて、安全対策マニュアルの見直しや職員研修を実施するとしている。毎日新聞は法人側の求めに応じて事実関係などを尋ねる文書を2回送ったが、期限を4カ月過ぎても回答はなかった。
放課後等デイサービス
小中高校などに通っている障害のある子どもが放課後や休日、長期休暇中に通える施設。一人一人に合った個別支援計画書を作った上で、遊びや学習などを通じて地域社会と交流し、生活能力や社会性を育むのが目的。2012年の児童福祉法改正で制度化された。利用者負担は原則1割で、残りは国や自治体の公費で賄われる。厚生労働省によると24年10月1日現在、全国で2万2643事業所、同年9月の利用実人数は63万3631人に上る。

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