本日は衆院選の公示日。選挙戦が始まる。それにしても、なぜ今なのだろう。
高市首相のポストを読んで思い出した、蕎麦屋の出前
「衆院きょう解散 予算影響 『なぜ今』争点に」(産経新聞1月23日)という見出しもあった。選挙によって経済対策が後回しになるのではないか、という指摘は少なくない。
高市首相はこうした声を意識したのか、Xに長文のポストを投稿した。
・「今回の解散総選挙によって物価高対策が遅れるのではないか」との御指摘をいただいておりますが、そうしたことはありません。
このポストを要約するとこうだ。解散があってもすでに決めた予算と政策に基づき、減税や光熱費・ガソリン支援などは止まらず進んでいる、という趣旨である。
これを読んで思い出したのが、蕎麦屋の出前だ。高市首相の説明は蕎麦屋でよく聞く「今、出ました」によく似ている。店は出たと言う。しかし、客(国民)の家にはまだ実感が届いていない。「実施」と「実感」は同義ではない、という点だ。
しかも今回は出前が届く前に店の宣伝を始めた。配達より先に「この蕎麦屋に任せていいか」という“信任投票”を求めてきたのである。かなり強気だが、まずは配達に専念したほうがよかったのでは。あの蕎麦はいま、どこにあるのか。
振り返ると、去年から取り沙汰されていた解散の時期は予算成立後、たとえば4月解散説だった。あと3カ月弱である。なぜ、この時間を待てなかったのか。もしかすると、この3カ月にヒントがあるのか。
普段なら今ごろ何があるのか。「国会」があった。通常なら国会が始まっている時期である。ということは、国会で取り上げられたくない、話題にされたくない何かがあるのではないか。
相当に都合の悪いものがあったのだろうか
高市首相の立場になって考えてみよう。台湾有事をめぐる答弁をきっかけに、中国との対立はレアアース輸出規制など経済戦の様相を帯びている。国内では物価高対策が続く。しかし、それだけではなさそうだ。
週刊文春最新号 には、次のような解説が載っていた。
「国会が始まれば追及必至の問題が次々噴出。林芳正総務相の選挙買収疑惑、高市氏への宗教法人からの不透明な多額献金に加え、『週刊文春』などが報じた統一教会『TM特別報告』の存在が不安視されていた。野党は材料を集め、手ぐすね引いて待っていました」(政治部デスク)
これらを回避するために、高市氏が「経済対策最優先」という前言を翻して切ったカードが、通常国会冒頭での解散だった、という見方である。相当に都合の悪いものがあったのだろうか。
ちなみに、高市氏への宗教法人からの不透明な多額献金問題については、週刊現代が熱心に追いかけ、文春も報じている。「高市総理に3000万 謎の宗教法人から出た『真っ黒』決算報告書」(週刊現代2月2日号)などだ。
では、こちらも気になる『TM特別報告』とは何か。
この『TM特別報告』は、旧統一教会幹部が韓鶴子総裁に提出した内部文書とされ、政治家との関係が詳細に記されている。安倍晋三元首相については「少なくとも5回会った」との記述があり、言及は約500回に及ぶ。
報告書には、2019年7月、自民党本部で安倍首相(当時)と萩生田光一幹事長代行に教団幹部が面会し、参院選比例代表で北村経夫候補(元産経新聞政治部長)の支援について話題になった、との記述もある。
教団側は「誇張の可能性」を否定していないが、日時など辻褄が合う部分も少なくない。だからこそ検証が必要ではないか。
毎日新聞は文書を入手し検証に踏み込み(1月23日付朝刊)、琉球新報も独自に検証している。ならば、他もどんどん続くべきだろう。
嘘なら大々的に反論すればよいが…
とりわけ注目されるのが、報告書に名前がある平井卓也議員の地元紙・四国新聞である。周知の通り、同紙は平井一族がオーナーを務める新聞だ。
サンデー毎日は「教団に近い『5人の大臣』」(菅政権時)の一人として平井氏の名を挙げている(「『TM特別報告』が浮き彫りにする自民党と統一教会の恐るべき蜜月」)。
教団と近いとされる元大臣の名前が内部文書に記され、その地元紙が“身内”の問題をどう扱うのか。これは政治報道である以前に、メディア自身の姿勢が問われる局面だ。
嘘なら大々的に反論すればよい。もし事実なら、それを伝えるのが新聞の役割ではないか。完全スルーで沈黙という選択肢は、少なくとも誇りある地元紙の態度とは言いにくい。さて、四国新聞はどうするのだろうか。注目である。
そしてこれは過去の政権だけの話ではない。高市首相も決して他人事ではないからだ。現政権においても、教団と関係が深いとされる議員が要職に就いている。
『安倍銃撃事件の当日、“高市首相・最側近”佐藤啓副長官は統一教会集会に招かれていた!《自民調査に「支援なし」と虚偽回答》』(「週刊文春」編集部2026年1月14日)
選挙期間に入れば、『TM特別報告』をめぐる話題は、新聞やテレビから姿を消す可能性が高い。だが、それこそが、解散によって国民の視線をそらしたかったとも言われてしまうのではないか。そんな疑念すら抱かせる――「そんなことより解散」である。
(プチ鹿島)