女性客で夜な夜な賑わうホストクラブ業界に暗雲が垂れ込めている。16日、警察庁のトップである露木康浩長官までもが「ホストクラブ」について異例ともいえる発言を行ったのだ。全国紙社会部記者が語る。
「露木さんは定例記者会見で悪質なホストクラブについての質問に答えるかたちで、『法と証拠に基づいて、悪質なホストクラブの取り締まりを強化したい』と意気込みを語りました。長官会見で特定の業態に言及するのは異例のことです」
ホストクラブでは、客が気に入ったホストを指名し、高額なシャンパンなどを注文することでホストの収入も上がる仕組みがとられるのが一般的だ。ホストの売り上げランキングを明示している店も多い。
「収入が無くても客がのめり込んでしまう」
ホストクラブ関係者が明かす。
「自分の『推し』のホストのランクをあげるためにどんどん高額な酒を頼んだり、他にもホストをテーブルに付けたりすることで、料金は青天井でのびる。ホストクラブではツケ払いが一般化しており、収入がなくても客がのめり込んでしまう一因にもなっている」
先の会見で露木長官が言及したのもその点だった。
「長官は、『ツケ』が払えず、違法な売春をさせられる事例にも触れ、これまでに売春防止法などの法令を駆使して取り締まってきたことを強調。背後に『匿名・流動型犯罪グループ』がいる可能性も指摘しました」(前出・記者)
問題を放置してきた警察は長年のツケを払えるか
匿名・流動型犯罪グループとはSNSなどでアメーバのように結びつく犯罪性向の強い人々の緩やかなネットワークを指す。広域強盗などが典型例だ。
「風営法で定められた営業時間を無視した違法営業などをしている店ではトラブル処理を、警察でなく暴力団などに頼むこともある。そうした勢力とつながる店は今も存在している」(別のホストクラブ関係者)
ただ、ホストクラブ自体の仕組みはさほど昔と変わっていない。急に警察庁トップが言及した背景には、開会中の臨時国会での「質問」の影響が大きいようだ。永田町関係者が明かす。
「立憲民主党の塩村文夏参院議員が9日の国会質問で初めて悪質ホストクラブの問題を取り上げただけでなく、消費者庁、厚生労働省、国家公安委員会から対策への前向きな答弁を引き出し、一気に政策マターになりました」
その後も立憲民主党が悪質ホストクラブ問題への対応を政府に要請。政府も対策の検討を表明するなど矢継ぎ早にことが進んだ。
だが、これまでホストクラブと犯罪グループとの関係が明るみに出た例はあまりない。露木長官の意気込みはどこまで実を結ぶか。問題を放置してきた警察が長年のツケを払わされる時がついに来たようだ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年11月30日号)