疑惑は深まるばかりだ。2013年に招致が決まった東京五輪をめぐり、石川県の馳浩知事(62)がIOC(オリンピック委員会)の委員に対し、内閣官房報償費(機密費)で贈答品(1冊20万円のアルバム)を渡したと発言した問題。
自民党の東京五輪招致推進本部長を務めていた馳氏の2013年4月1日付のブログ「はせ日記」では当時、菅義偉官房長官(74)に招致活動の方針について報告、了承してもらったことや、その中に「想い出アルバム作戦」などと明記されていたことが発覚した。
22日の会見でこの部分について問われた馳知事は、ブログの記述は「事実」と認めつつも、具体的な内容については「一切発言しない」と繰り返した。
IOCの倫理規定では、招致活動の際に各国委員におみやげを贈ったり、便宜を図ったりすることは禁止されている。
馳知事の発言が事実であれば、アルバムを手渡していたのは事実上の“買収工作”と受け取られても仕方ないだろう。発言を撤回したのでオシマイ……では済まない問題だ。
■過去の国会質疑で招致活動は「フェアプレー」などと答弁
しかも馳氏は、招致活動をめぐる裏金疑惑が発覚した時に開かれた2016年5月25日の参院行政監視委員会に文科大臣として出席した際、山本太郎議員(48=現れいわ新選組代表)とこんなやり取りをしていたのだ。
山本「大臣に、一言でお答えいただきたいと思います。東京オリンピックは、招致活動においても、うそも裏金もなくクリーンに行われたとお考えになりますか」
馳「はい、そのように考えておりますし、今回のように裏金疑惑というふうに表現をして報道されることは、私も招致に関わった一員として大変胸を痛めているところであります」
さらに山本氏が招致活動の方針などについてあらためて問うと、馳氏はこう断言していた。
「IOCの規定では相手の都市などを攻撃をしてはいけない、フェアプレーでやるべきだということで(略)」
「うそも裏金もなくクリーン」「フェアプレー」で招致活動に携わり、裏金疑惑に「胸を痛めて」いたというのであれば、馳氏は自らの発言に対しても責任を持つのは当然だろう。
■「金はいくらでも出す」と発破をかけ「フェアプレーの精神」を言う“二枚舌”
ちなみに当時、馳氏に対して「必ず(招致を)勝ち取れ」「金はいくらでも出す」「官房機密費もある」と告げたという故・安倍晋三元首相は2013年5月、2020年の五輪開催都市をめぐって東京と争っていたライバル都市イスタンブールのあるトルコを訪問。エルドアン首相と会談した際、「オリンピック憲章とフェアプレーの精神にのっとってベストを尽くしていこう」と発言していた。
「必ず勝ち取れ」「金はいくらでも出す」などと「袖の下」も厭わないかのような発言をして発破をかけながら、表では「フェアプレーの精神」「ベストを尽くしていこう」とは……馳氏の発言が事実であれば、安倍氏の言動も“二枚舌”と指摘されてしまうのではないか。
安倍氏はIOCから、オリンピック精神の普及や発展に貢献した人に贈られる功労章「オリンピック・オーダー」を授与された。馳氏が国会に招致され、機密費を使った贈答品を手渡していた実態が明らかになった時は即刻、「オリンピック・オーダー」を返上ものだ。