高市早苗経済安保相に対する、自民党安倍派の風当たりが強い。閣僚の立場ながら、党内に勉強会を立ち上げた高市氏に対し、塩谷立・安倍派座長は「政局につなげる意図があると、おかしな方向に行く」と語った。世耕弘成参院幹事長も「現職閣僚が勉強会を立ち上げるのはいかがなものか」と批判した。
これに対し、高市氏はSNSの投稿で、「何が悪いのか、意味が分からん」と反発した。さらに、「本会議場で総理の批判をされた方々に、まるで私が謀反を起こしたかの様な発言をして頂きたくはありません」と発信した。これは明らかに世耕氏の代表質問での岸田批判をあてこすったものだ。
ところで、今や世論調査の結果には誰も驚かない。
読売新聞(17~19日実施)の内閣支持率は10ポイントの大幅下落で24%。朝日新聞(18、19日実施)は4ポイント減の25%。毎日新聞(同)が4ポイント減の21%だった。次は10%台か。各紙は岸田政権の「底が抜けた」と表現している。
先週この欄で、支持率が下がっているのはLGBT法成立を境に、岩盤支持層が「離れた」だけでなく、「敵に回った」からだ、と書いた。「保守派の反乱」だ。
岸田文雄政権の所得減税をめぐって、批判の急先鋒(せんぽう)になった保守派の論客や、あるいは作家の百田尚樹氏が立ち上げた日本保守党の大阪での街宣に集まったすごい数の人たちは、「高市総裁」なら自民党に戻ってくるかもしれない。だが、安倍派が高市氏の「敵」になってしまったら、総裁の椅子は遠ざかる。
そして、岸田内閣の支持率が10%台に落ちれば、自民党内では「選挙に勝てる顔」探しが始まるだろう。もし、菅義偉前首相が人気のある「小石河連合」(河野太郎、石破茂、小泉進次郎の3氏)の誰かを担げば、党内はそちらに流れる可能性がある。
一昨年の総裁選で、高市氏を「保守のスター」と呼んで支援した安倍晋三元首相は、同時にリベラルな河野氏を勝たせたくなかったから、「よりマシ」な岸田氏との「2位3位連合」を組んだ。安倍氏の「リアリスト」たるゆえんだ。
保守派は今、安倍氏亡き後の岸田政権に強い不満を持っている。そして、一部の保守派の岸田攻撃がさらに激しくなれば、政権は崩壊するかもしれない。保守派を制御できる安倍氏はもういないからだ。
ただ、その時に自民党が高市氏でなく小石河連合を選択すれば、その政権は今よりさらにリベラルな方向に進み、保守系議員の離党、すなわち「自民党分裂」にもなりかねない。
保守派が岸田政権に怒るのは分かる気もする。安倍氏が突然亡くなった後に訪れた日本政治の混乱は避けられないことなのだろう。だが、「保守派の反乱」が拡大すると自民党を壊し、日本を壊すかもしれない。 (フジテレビ上席解説委員・平井文夫)