埼玉県白岡市は130年以上の歴史がある市立大山小学校を来年度いっぱいで廃校とする方針を固め、市議会全員協議会で、12月定例市議会に条例改正案を提出する考えを示した。市は今夏に保護者説明会で廃校の方針を示したが、当時、廃校時期や統合後の通学先について具体的な説明はなかった。保護者や地元住民からは、「『来年度いっぱいで廃校』は寝耳に水」などと、反発や戸惑いの声が上がる。【鷲頭彰子】
大山小学校は1889(明治22)年設立。最寄りのJR新白岡駅からは車で15分ほどで、周囲には国道122号や圏央道白岡菖蒲インターがあり、校区内には工業団地も立地する。
一方、ナシ栽培など農業が盛んだったため市街化調整区域に指定され、宅地建設が制限されている地域も多い。就農者が減るのに伴い子育て世代も地元を離れ、児童数は年々減少が続いた。
市は2019年、市総合教育会議で議論し、「(少人数で)細かな指導が可能」という同校のメリットを重視し、市費で加配教員を付け、複式学級を解消することになった。「小規模特認校」に指定し、学区外からも通学できるようにした。
だが、児童数減少には歯止めがかからず、今年度の全児童数は54人。4年後の新入生はゼロとなる見込みだ。
市教委は22年、小規模校として存続させるこれまでの方針を変更し、廃校の検討を開始。23年8月、市は保護者と地域住民への説明会を開き、廃校の方針を表明した。
9月には保護者に廃校の賛否や廃校時期などを問うアンケートを実施。市教委によると、「統廃合すべきだ」19%▽「やむを得ない」39%▽「決まれば受け入れる」12%▽「どちらとも言えない」15%▽「存続させるべきだ」15%――だったという。
同月後半に開かれた説明会では保護者から廃校時期や今後の通学先について質問が出たが、「廃校決定後に決める」と明確な回答を避けた。一方、10月の市議会全員協議会では、25年4月1日で廃校とする条例案を12月市議会に提出する考えを示した。
大山小に児童を通わせる保護者は、「児童が減っていくデータを見せられたら『統廃合も仕方ない』と思うのが普通。市が選択肢を作らないから、アンケートで『やむを得ない』と回答するしかなかった」と反発する。別の保護者は、教育内容や少人数学級に不満はないといい、「『なぜ早く統合しないのか』という保護者もいるのは確か。だが、うちの子は卒業まで通いたい」と話す。
地元住民は、「いつか廃校になるのは仕方ないが小学校は地域の拠点。地域振興策も含めて示すのが説明会だ。市が行ったのは一方的な方針発表で、説明会とは言わない」と批判している。
三輪定宣・千葉大名誉教授(教育行財政学)は「小学校の廃校は子どもたちの就学状況が激変する大変なもの。文科省も統廃合の留意点として地域住民等との『十分な理解や協力』など『合意形成』を求めている。今回の保護者アンケートでは『統廃合すべきだ』が19%で8割以上が消極的または反対であり、住民合意に反している。市教委が統廃合を進めたいのなら、慎重に納得が得られるまで話し合う必要がある」と指摘する。
各地で小中統廃合進む
県内では児童・生徒数の減少を受け、各地で小中学校の統廃合が進む。
2024年度に常光小と鴻巣中央小が統合する鴻巣市。15~17年の「小・中学校適正配置等審議会」で統廃合の対象校が示され、検討が続けられてきた。
22年8月には審議会が24~27年を予定年度とし、学校の統廃合を進めるよう答申。各地で保護者や地域住民らと意見交換会が開かれた。市教委は「あらかた説明を尽くした」として、22年12月議会に両校を統合する条例改正案を提案し、可決された。
行田市では22年度、須加小と荒木小が統合して見沼小、中央小と星宮小が統合し忍小が誕生した。審議会の答申を受けた市が19年3月に統廃合の対象校を提示。各地で保護者や地域との意見交換会などを開いた上で、統廃合を決めたという。