日本大学アメリカンフットボール部の薬物事件をめぐり、酒井健夫学長と沢田康広副学長が、理事会側からの辞任勧告を受け入れる方向で調整していることが分かった。林真理子理事長については減給50%とするという。一方で沢田副学長は27日、辞任を強要されたのはパワハラに当たるとして、林理事長を相手取り、1000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。泥仕合の様相となってきた日大の林理事長体制で、改革は進むのか。
訴状によると、沢田副学長側は、林理事長から辞任を強要されたことや、合理的な理由を告げられることなく、ほぼ全ての会議への出席を禁止されたことは、パワハラにあたるなどと主張している。
22日の理事会では酒井学長と沢田副学長に辞任を要求する方針がまとまった。27日が辞任勧告への回答期限とされ、同日以降に林理事長の減給案とともに学内で協議される方向だ。
先月公表された薬物事件に関する第三者委員会の報告書は、沢田副学長が7月に寮で大麻のような不審物を発見してから警視庁に報告するまでの「空白の12日間」が「(大学の)信用を失墜させた最大の原因」と指摘した。酒井学長は早い段階で報告を受けたのに問題視せず、林理事長への報告も遅れたとした。
林理事長も事態を把握した際、理事会への報告を行わず、沢田副学長の説明をうのみにしたとして、「ガバナンスの前提となる情報収集態勢、報告ルールの不備」があったとした。
文部科学省は改善計画を今月中に提出するよう日大に要請、私学助成金も3年連続不交付が決定している。
大学内部では、第三者委の報告書がまとまる前から林理事長が沢田副学長に辞任を求めるなど混乱も生じた。
「体制刷新」の行方をどうみるか。
大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は「教員や理事らは第三者委の報告書を信頼しているとされる。学長と副学長は納得していなくても味方を失い、引導を渡された形だろう。林理事長の去就については後任の問題も浮上するため、『次に何か不祥事が起きた場合』とし、減給にとどまったとみられる。日大は経営陣にOBを望む風潮があるが、OBではスポーツ部の体質にメスを入れにくいとも考えられる。学長、副学長の後任はもちろん、本来は理事長も文科省の官僚出身者や、他大学の学長経験者ら外部からの人選が望ましい。そうでなければ、次に不祥事が起きても今回の二の舞いになりかねない」と警告した。