死刑判決の裁判長に「あんた生涯、後悔するよ」発言から2年あまり…市民を襲う“最凶”暴力団トップの弁護団は「事件はナンバー2の指示」

裁判長に「生涯、後悔するぞ」と強い口調で迫った1審判決から2年間あまり。市民を標的とした4つの襲撃事件で殺人や組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などの罪に問われた特定危険指定暴力団「工藤会」(福岡県北九州市)のトップらの控訴審が29日、福岡高裁で結審した。1998年に漁協組合長だった梶原国弘さん(当時70)が射殺されるなどの各事件では、実行役の組員らの実刑がすでに確定。最高幹部・野村被告らの“指示”があったかどうかが争点。それまで無罪を主張していたナンバー2は、控訴審に入ると一転して一部の事件で犯行を指示したことを認めており、裁判所の判断が注目される。
◆1審の“死刑判決”後、裁判長に「生涯、後悔するぞ」
特定危険指定暴力団・工藤会トップ野村悟被告(77)と、ナンバー2の田上不美夫被告(67)は、▽1998年に漁協の元組合長が射殺された事件、▽2012年に起きた暴力団捜査を担っていた元警部の銃撃事件、▽2013年に野村被告の通っていたクリニックの看護師が刺された事件、▽2014年に元漁協組合長の孫にあたる歯科医師が刺された事件などの4つの市民が襲撃された事件に関与したとして起訴された。1審の福岡地裁では、野村被告に死刑、田上被告に無期懲役の判決がそれぞれ言い渡された。当時、福岡地裁は「野村被告が首謀者、あるいは指示命令があった」と認定していた。審理をめぐっては、1審の死刑判決後に野村被告が法廷で「生涯後悔するぞ」と裁判長に怒声をあげたことも注目された。
◆トップが死刑になり「不徳を恥じた」一転して“犯行指示”を認める
両被告は1審判決後に弁護人の全員を解任。過去に著名事件を担った弁護士を新たに主任弁護人に迎え入れ、控訴審に臨んでいた。それまで「配下の組員が勝手にやったこと」などとして両者は全面的に無罪を主張してきたが、控訴審に入ると田上被告が主張を変えた。“看護師事件”と“歯科医師事件”について「野村被告に連絡せず、組員に犯行を指示した」と述べ、一転して関与を認めた。「無関係な野村被告を巻き込み、有罪とされる事態に直面し、不徳を恥じた」と説明している。野村被告は、1審に続き無罪を主張している。
◆「重大な事実誤認」「事件は田上被告の指示」
野村被告の弁護側は29日、「1審は重大な事実誤認があり、破棄されるべき」などと最終弁論で主張した。具体的には、元漁協組合長が殺害された事件について「実行犯の男が個人的な恨みで犯行に及んだ」と主張。ほかの事件についても田上被告の指示などで行われたもので「野村被告は指示しておらず無罪にして無実である」と述べた。
一方、田上被告は一部の事件について「殺意はなく傷害罪にとどまる」と主張し、残余の事件は無罪を主張した。判決は来年3月12日に言い渡される予定。

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