陸上自衛隊トップの森下泰臣・陸上幕僚長は30日の記者会見で、米空軍の輸送機CV22オスプレイが鹿児島県・屋久島沖で墜落した事故を受けて、陸自が保有するオスプレイ14機の入念な点検と搭乗員への必要な安全教育を速やかに実施するよう求める通達を部隊に出したことを明らかにした。
防衛省は事故の状況が明らかになるまで当面の間、オスプレイの飛行を見合わせる方針。事故原因に関わると予想される機体の健全性を点検するため、エンジンやローター、操縦系統などについて、目視点検と作動確認を進めているという。
点検の終了と、米軍側で事故の状況が明らかになるまでに時間差が生じる可能性があるが、再開の時期について、森下氏は「予断を持っての答えは差し控える。あらゆる状況を確認しながら総合的に判断したい」と述べるにとどめた。
見合わせは訓練飛行が対象で、森下氏は「隊員の教育には若干の影響が出ると思う。災害派遣や防衛警備事態など任務飛行の必要性が生じた場合は、その都度適切に対処し、影響が局限できるようにしたい」と説明した。
また、島しょ防衛能力を構築するため陸自木更津駐屯地(千葉県)から佐賀空港(佐賀市)にオスプレイを移す計画に対する事故の影響については、「地元の懸念の声も真摯(しんし)に受け止めつつ、引き続き計画通り整備に取り組んでいく。入念な整備と安全な運航に努めて、(オスプレイという機体の)信頼回復に努めたいと思っている」と述べた。
陸自のオスプレイについて、同省側は「導入前後に安全性を確認しており、疑義が生じているわけではない」と説明。その上で、飛行を見合わせる理由について、「今回の事象そのものを把握するため、見合わせると判断した」という。陸自のオスプレイが暫定配備されている千葉県や移駐先の佐賀県といった「地元への配慮が見合わせの理由ではない」とする一方、「受け入れ自治体には誠心誠意、説明する」としている。
目達原駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)で12月3日の創立記念行事での展示飛行と、そのための11月30日の訓練飛行も見合わせる。【松浦吉剛】