冬季五輪開催、札幌市長「土俵なくなった」…苦笑いする主婦「招致に税金使うより市民に還元して」

「非常に残念」「先過ぎてイメージがわかない」――。11月29日に開かれた国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で、冬季五輪・パラリンピック開催地が、2030年はフランス、34年が米ソルトレークシティーに内定した。38年大会もスイスが優先的に対話を進めると決まったことで、近い将来での招致は事実上なくなり、札幌市民や競技団体関係者に戸惑いが広がった。
30日に東京都内で報道陣の取材に応じた秋元克広市長は「事実上、土俵がなくなった」と語った。その上で年内に地元の関係者と議論し、今後の方向性を決める考えを明らかにした。
市は当初、1972年以来2回目の五輪を2026年に招致することを目指したが、18年に北海道で胆振東部地震が起き、30年大会に照準を変更。だがその後、東京五輪の汚職事件などもあって招致の機運が高まらなかった。今年10月に30年大会の断念を表明し、2か月足らずで34年、38年の招致の可能性が遠のいた。
市民は驚きをもって受け止めた。札幌市西区の主婦(56)は「招致に税金を使うよりも市民に還元してほしい」と苦笑い。公園の遊具で長男(5)と遊んでいた同市中央区の主婦(34)も「もし42年に招致が決まればだいぶ先。五輪はよくないニュースも多く、札幌が巻き込まれるのは嫌だ」と話した。
競技団体からも落胆の声が上がった。全日本スキー連盟の勝木紀昭会長は「非常に残念。しかし、スポーツの意義や素晴らしさは変わらない。これからも選手強化とスノースポーツの普及に努める」とコメント。スピードスケート競技が予定されていた帯広の森屋内スピードスケート場(明治北海道十勝オーバル)がある帯広市の佐藤真樹スポーツ課長は「子どもたちに間近で見てもらう機会が遠のいてしまったのは残念」と肩を落とした。
五輪招致を再開発の追い風に、と考えていた札幌財界の関係者は「五輪招致がなくなっても、まちづくりは進める必要がある。次世代に任せたい」と語った。
鈴木知事は「札幌市の考えをお聞きし、対応を協議したい」との談話を出した。

招致巡る検証、課題山積

「土俵から降りて、支度部屋まで戻るしかない」。札幌市幹部は、2038年大会もスイスとの対話を優先するというIOCの決定を受け、札幌の置かれた状況を相撲に例えた。
14年に上田文雄市長(当時)が招致を表明してから9年。実現が望める42年までは、その倍の年月がある。招致プロセスや社会状況は変わるかもしれず、活動の先頭に立つ顔ぶれは、1972年大会を知る世代から交代が進むだろう。白紙に戻さざるを得ない状況だ。
天然雪に恵まれた札幌は昨年まで30年大会の最有力候補として認識されていた。しかし、わずか1年で状況は一変し、今回の3大会では名前は挙がらず、IOCから見限られた形だ。
2大会同時決定や38年の優先対話など、この2か月に起きた「想定外」に日本オリンピック委員会(JOC)など招致関係者はついていけず、秋元市長は「情報を十分に把握できなかった」と認めるしかなかった。
東京大会の問題が影響したのは間違いないが、開催意義がわからないという市民は多かった。市や経済界、さらに道を含め一体感も欠けた。遠い将来になっても招致を目指すのか。検証すべきことは山積みだ。(中尾敏宏)

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