23歳の男性が新型コロナウイルスに感染し、死亡したのは「速やかに救急搬送されず、適切な治療を受けられなかったため」として、男性の遺族が国や自治体に対し、1億円余りの損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。
訴えによりますと、千葉県船橋市に住んでいた当時23歳の男性は、おととし8月、新型コロナに感染し、医師から「肺炎や合併症があるため入院が必要だ」と診断されましたが、保健所の指示でホテルで療養することになりました。
男性は39度の発熱があり、両親に対し「ホテルで一度も看護師が部屋に来ない。救急車も呼んでもらえない。もう死ぬ直前だ」と訴えたということで、両親は男性を自宅へ連れ戻しました。
その後、両親は繰り返し救急搬送を要請しましたが、「受け入れ先の病院が決まらない」「調整中」といった理由で搬送を断られたということです。5回目の要請で病院に搬送される途中で男性の容体は急変し、その後、死亡しました。
きょう午後、都内で会見を行った男性の両親は、涙ながらにこう訴えました。
男性の父親「長男が亡くなってから毎日が地獄です。夢も希望もある、何でもできる青年が何の治療もしてもらえず、死ぬ社会は終わりにしてください」
男性の母親「息子の命は、必ず助かる、救える命だったと考えています」
両親は、船橋市と千葉県に加えて国についても「全国的な搬送体制を調整し、都道府県に必要な指示を行う権限があった」などと訴えています。
両親の弁護士によりますと、新型コロナ患者の救急搬送をめぐり、国を訴えた裁判は初めてだということです。