巨額の資金を懐に入れていたのは誰なのか──。
自民党5派閥が政治資金パーティーの収入を裏金化していた疑惑を巡り、驚きの事実が発覚。永田町が騒然としている。共同通信のスクープによると、最大派閥・安倍派の所属議員の中に、直近5年間で9000万円超のキックバックを受け、裏金にしたとされる議員がいるというのだ。
安倍派全体での裏金は、この5年間で1億円超と目されている。10人以上がパー券販売ノルマ超過分のキックバックを受け、うち複数が1000万円超を受領していたというが、1人だけ突出していたということだ。党内は「一体誰なんだ」と大騒動になっている。
「5年間で9000万円ということは、年間で平均1800万円だ。ノルマ分を加えたら、1年で2000万円以上もパー券をさばいていたことになる。大物議員でないと、とても無理な集金額です」(自民党関係者)
東京地検特捜部は、既に安倍派の会計担当職員や議員秘書にも聴取済み。会計担当職員は特捜部に「収入の一部を議員側に還流させていたことを事務総長に報告した」と説明しているという。安倍派がパー券収入を専用の口座で管理していたことも分かっている。特捜部は歴代の事務総長らへの聴取を視野に捜査を進めているというから、今頃ビクビクしている幹部がいるに違いない。
■ズレが裏金化スキームと関連か
それにしても不可解なのは、安倍派が昨年開催したパーティー収入の金額だ。所属議員に課された販売ノルマの合計額と、実際の売り上げに大きなズレが生じているのだ。
日刊ゲンダイは、安倍派の政治資金収支報告書(2022年分)をチェック。22年5月17日に都内ホテルで開催したパーティー収入は「9480万円」と記されている。ところが、どうもツジツマが合わない。所属議員がノルマ分をさばいていれば、もっと巨額になるはずなのだ。
安倍派関係者によると、販売ノルマはヒラの議員が50万~100万円で、閣僚経験者は500万円前後。最高幹部クラスは750万円だ。
安倍元首相が存命だった昨年5月時点で、安倍派所属議員は94人。うち、最高幹部クラスの安倍を含めた閣僚経験者は22人で、ヒラの議員は72人だった。ヒラの議員のノルマを50万円、閣僚経験者は500万円、安倍は750万円と仮定して計算すると、計1億4850万円になる。キックバックされたノルマ超過分を含めれば、さらに金額は膨らむはず。収支報告書に記載された収入と合わず、極めて不自然なのだ。ひょっとして、このズレが裏金化スキームと関連しているのか。
それでも、たった1度のパーティーで1億円も集めてしまうのだから、安倍派議員の集金力には驚くしかない。本紙は、パーティーが開かれた昨年5月時点での安倍派の閣僚経験者22人の集金力を調査。各議員の関連政治団体の22年分の収支報告書(死去した安倍と昨年中に引退した議員は21年分)を精査した。
年間の収入が最も大きかったのは、西村経産相の「1億3483万円」。2位以下は末松元文科相「9160万円」、安倍「8470万円」、衛藤征士郎元防衛庁長官「8176万円」、岸元防衛相「6891万円」だった。
政治活動にはそれだけ巨額のカネがかかるということなのか。