元官房長官の「官房機密費」告発を関係者はどう受け止めたか? 官邸の“ブラックボックス”と安倍派の裏金問題に通底する「政治とカネ」の闇

“秘密のベール”に包まれた「内閣官房機密費(報償費)」。森友学園問題をスクープしたジャーナリスト・相澤冬樹氏が本誌・週刊ポスト前号(2023年12月15日号)で報じた河村建夫・元官房長官(81)の“爆弾告発”は大きな反響を呼んだ。相澤氏が「政治と金」の問題についてさらなる爆弾を投下する。
* * * きっかけは11月17日、馳浩・石川県知事が講演会でポロッと漏らした発言だった。
自民党の東京五輪招致推進本部長だった当時、国際オリンピック委員会(IOC)委員の現役選手時代の活躍を載せたアルバムを、「官房機密費を使って1冊20万円で作成して渡した」と“暴露”してしまったのだ。
直後に「発言を撤回する」と説明を拒んだことも火に油を注いだ。
そうしたなか、機密費の内実を知る麻生太郎政権時の官房長官・河村建夫氏の証言は、朝日新聞が後追い記事を出すなど反響が広がった。
首相官邸という“権力の館”の内側にいた者しか知りえない実情が初めて明かされたからだろう。河村氏は、「官房長官は報償費のことは語らないものなんだ」と断わりつつも、
「馳さんは当たり前のことという軽い感覚で話したんだと思うよ」 「歴代の官房長官に引き継がれる使い途というのがあるんだ。国対とか」 「麻生内閣は首相自ら色々と仕切るタイプだったから、彼からよく指示があった。あそことあそこに(機密費を)渡してくれと」
など機密費の実態の一端を明かした。
馳氏は、ほかにも招致にあたり安倍晋三首相から「必ず勝ち取れ」「金はいくらでも出す」「官房機密費がある」と言われたと語っている。機密費を首相の裁量で自由に扱えることが透けて見える発言だ。
折しも河村氏の証言が出る直前、自民党最大派閥の「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティーの収入の一部を政治家に環流させ裏金化していた疑惑が報じられた。こうした「政治とカネ」の闇が機密費についてもあったのではないか。
第2次安倍政権が、発足から7年間で計上した官房機密費は約86億円。年間10億円を超える“使途不明の金”だ。安倍派の派閥のための政治資金として“裏金”にされたのではないかと疑われても仕方がないだろう。
五輪招致と官房機密費、そして政治資金の裏金疑惑と政界の金を巡る問題に改めて関心が高まっている。そして機密費に関する前号の記事は、これまでその受け渡しに関与した関係者たちに大きな波紋を呼んだようだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする