なし崩し解散が起きるのか。13日に国会が閉会となり、東京地検特捜部による自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題への捜査が本格化する。特にキックバックの総額が5億円規模になる安倍派がターゲットとなる見込み。すでに複数の政治家の名前が取りざたされているが、議員辞職もあり得る。その人数によっては来春の解散総選挙も現実味を帯びてくる。
この日、立憲民主党は岸田内閣に対する内閣不信任案を提出。反対多数で否決となったものの、岸田内閣はガタガタだ。
松野博一官房長官や西村康稔経産相に裏金問題が直撃。4人の安倍派閣僚、5人の副大臣が事実上の更迭となる。また、萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長も辞任。内閣と党に激震が走っている。
安倍派の中でキックバックを受けながら政治資金収支報告書への不記載が指摘されているのは松野氏、西村氏、萩生田氏、高木氏、世耕氏ら〝5人衆〟だけではない。ほかに大野泰正参院議員が約5000万円、「頭悪いね」発言の谷川弥一衆院議員が約4000万円、池田佳隆衆院議員も約4000万円とそれぞれ不記載を疑われている。
さらに、この日、安倍派の宮沢博行防衛副大臣が140万円の不記載を明かしただけでなく、不記載が派閥の指示だったと告白。「ことここにいたった限りにおいてはしゃべるしかない」と派閥からのかん口令を無視し、「(キックバックされた金は)厳正に管理し政治的活動として使わせてもらい、領収書も整えております」と私的なことには使っていないと訴えた。
もはや安倍派の崩壊が始まりつつある。安倍派への関心が強い特捜部の捜査がどこまで及ぶかは未知数。永田町関係者は「すでに名前の出ている人たちが捜査されるのは間違いない。まだ、名前の出ていない人もいるかもしれない」と、さらなる拡大の可能性を指摘した。
一方で岸田文雄首相からすればあくまで安倍派の問題で自分の問題ではないともいえる。「そんな感じが岸田氏からは漂っているが、そうも言っていられない。捜査の進展次第では議員辞職する安倍派議員も出てくるだろう。1人、2人ならともかく、4人、5人と増えたらどうだろうか。辞職となったら補欠選挙をしないといけない」(同)
衆議院小選挙区の場合、公選法によると、辞職や死亡などで欠員が生じたら補選が実施される。時期は4月と10月となっており、今のタイミングでの辞職となったら来年4月の補選となる。
すでに細田博之前衆院議長の死去により、来年4月に島根1区の補選が行われることが決定している。同じ日に裏金問題を受けての補選があるかもしれないわけだ。
「あまりにも多くの補選が同日に行われることになったら、『お金の無駄だからいっそのこと解散総選挙をするべし』という声が世間からも永田町からも起きるでしょう。過半数さえ取れればいい自民党からしても絶対ダメというものでもないはず。疑惑のある議員の中には10増10減でなくなる選挙区選出の人もいる。でも、補選となったらなくなる予定の旧選挙区で補選ですよ。それでいいんですか」(同)
なし崩しでの解散も予期されるわけだ。問題は岸田氏の手で解散なのか、直前で新しい顔になるのかだが、岸田氏はこの日の記者会見で「自民党の体質を一新すべく先頭に立って闘うのが自分の務めだ」と辞める気はサラサラない様子だった。