岸田首相は16日、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議のため来日した7か国首脳と相次いで会談した。マレーシアとは、同志国の軍に防衛装備品を無償供与する「政府安全保障能力強化支援」(OSA)で、小型の救難艇と警戒監視用ドローンなど(総額約4億円相当)を供与することで合意した。
岸田首相は同日、最初の会談相手となったマレーシアのアンワル・イブラヒム首相に対し、「世界が歴史的な転換点にある中、自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、ASEANと協力を強化していきたい」と訴えた。
会談では、外務・防衛当局間の戦略対話を新設することを決定し、会談後には、両国関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」に格上げする共同声明を発表した。マレーシアは、南シナ海で中国と領有権を争っており、日本はOSAなどを通じ、中国の覇権的な動きをけん制したい考えだ。
南シナ海では、インドネシアやベトナム、フィリピンも中国と対立する。岸田首相はインドネシアのジョコ・ウィドド大統領との会談で、大型巡視船1隻を供与するため、総額約90・5億円の無償資金協力を行うことを確認した。ベトナムのファム・ミン・チン首相とは、防衛交流の拡大や防衛装備品移転への協力推進で一致した。
日ASEAN関係は、1973年に日本の合成ゴム輸出への懸念を踏まえて開かれた閣僚会議が始まりだ。50周年にあわせた18日までの関連会合の期間中、岸田首相は、参加するASEAN加盟9か国と、加盟予定でオブザーバー参加の東ティモールの計10人の首脳全員と個別に会談する。
ASEANは、国ごとに体制や対中関係も様々だ。内陸国のラオスは中国への経済依存度が高い。岸田首相はソンサイ・シーパンドン首相との会談では、来年のASEAN議長国として成功できるよう支援する考えを伝えた。全方位外交を展開するブルネイのハサナル・ボルキア国王との会談では、液化天然ガス(LNG)の安定供給への謝意を示し、エネルギー分野での協力強化を申し合わせた。