2028年度の開設を目指す佐賀県立大を巡り、県議会本会議は20日、最大会派の自民党が提出した県立大の関連事業費を削除した修正議案を賛成多数で可決した。これを受け、山口祥義知事は修正議案について再議に付した。再議による修正議案の可決には3分の2以上の賛成が必要で会期を延長し、21日に採決される。
再議は佐賀県政史上初。議会判断に拒否権を行使した形で県立大を巡る執行部と議会との対立構図が鮮明となった。
20日の本会議では自民会派が県立大の機能を検討するための「具体化プログラム」の推進事業費を削除した修正議案を提出。自民党県議団の藤木卓一郎会長は提案理由で「議会、県民を置き去りにしたままの議論に危機感を抱いている」と強調。「再議が出されれば県政史上に残る大きな汚点になるだけでなく、県議会の議論を軽視する知事の政治姿勢が明確となり、多くの県民からの批判を受けることは必至だ」と批判した。
採決の結果、賛成17、反対9人の賛成多数で可決。27人の自民会派は10人が退席し、1人が反対に回り、判断が割れた。
これを受け、山口知事が再議を請求。山口知事は提案理由で「県民本意の立場で議論していくことは議員と私は一致できるのではないか。子どもたちの未来のために議論を一歩前に進めよう」と賛同を求めた。
県立大の設置を巡っては県は県議会11月定例会に「具体化プログラム」の推進事業費800万円を盛り込んだ一般会計補正予算案を提出したが、14日の総務常任委員会で賛成少数で否決していた。【五十嵐隆浩】
県議会最大・自民会派内の溝浮かぶ
県立大関連事業費を削除した修正案の本会議採決で自民会派からは10人が退席し、1人が反対し、判断が割れた。山口知事が繰り出した再議の判断は、山口知事との距離感を巡る会派の溝も浮かび上がらせた。
山口知事が19日に再議を求める意向を示したことを受け、同日午後、自民党は県議団総会を開催した。会派には賛成派も約10人おり、修正議案提出を巡る協議は難航。12時間に及び、終了したのは20日午前0時前だった。
会派幹部によると、会派では意見が対立した。賛成派は「執行部としこりを残すことは避けた方がいい」と主張。会派離脱も辞さない構えを見せる議員らもおり、20日の本会議は実質、党議拘束をしない形を取った。本会議で退席者が出たのも「反対しないという態度で会派内の分裂を回避し、一縷(いちる)の命脈を維持する最後のギリギリの選択。妥協の産物だった」(自民県議)。
会派幹部は再議について「一事不再議の原則に反し、民主主義のメカニズムに対する挑戦」と懸念。「1人会派ではないので統一行動を取らないといけない。その点はもう一度今後確認していく」と話した。【五十嵐隆浩】