自民党安倍、二階両派が東京地検特捜部の捜索を受け、政府・与党には衝撃が広がった。低支持率にあえぐ岸田首相(党総裁)の政権運営が一段と厳しくなるのは必至だ。信頼回復に向け、派閥の改革や政治資金規正法の改正を求める声が強まっており、首相の指導力が問われている。
「捜査機関の活動内容についてお答えするのは控えなければならない」
首相は19日午後、首相官邸で記者団の問いかけに多くは語らず、険しい表情で国民の信頼回復を目指す考えを示した。林官房長官は記者会見で、「政治に対する不信など国民の声を 真摯 に受け止める」と語った。
自民の茂木幹事長は記者会見で、「このような事態に至ったことは大変遺憾で、厳粛に受け止めている」と強調。公明党の山口代表は記者会見で、「国民の信任が乏しくなることによって、政権の危機に直面している」と危機感をあらわにした。
首相は14日、派閥パーティー収入の裏金化疑惑を受け、松野博一・前官房長官ら安倍派の4閣僚を交代させた。しかし、内閣支持率は最低水準が続いており、捜査の進展によっては逆風がさらに強まる恐れもある。
首相はこの日の党役員会で、「党としても国民の信頼回復のための新たな枠組みを立ち上げる」と述べ、政治資金問題で党改革を進める方針を改めて表明した。もっとも、時期などの具体的な言及はなく、自民内からは「対応が悠長過ぎる」(閣僚経験者)との不満が出ている。
野党は、検事総長に指揮権を持つ小泉法相と、自見万博相の二階派閣僚について、首相が続投を明言したことに批判を強めている。
小泉氏は記者会見では、「検察当局は厳正公平を旨とし、法と証拠に基づいて対処する」と指摘し、捜査の中立性が損なわれることはないと訴えた。ただ、二階派に対する特捜部の捜査は当面続くとみられることから、派閥を離脱する方向で検討に入った。
公明の山口氏は小泉、自見両氏の続投に関し、「首相が人事権者として、国民の理解を得られるような対応を取ることを望みたい」と述べるにとどめた。