札幌市教育委員会は21日、市内の中学生が2021年に自宅で自殺し、いじめが原因だったと発表した。生徒は教員にいじめを訴えて自殺の意図を伝えたが、適切な対応がされなかったという。記者会見した檜田英樹教育長は学校と市教委の不備を認め、「尊い子どもの命を救ってあげられなかったことの責任を痛感している」などと謝罪した。
遺族の代理人弁護士によると、中学生は女子生徒で、中学1年(当時12歳)だった21年、3通の遺書を残して自宅で自殺した。遺書にはいじめに関する記載があり、市教委は、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定。市教委はこの日、第三者委員会がまとめた「重大事態調査報告書」も同時に公表した。
報告書によると、女子生徒は小学校時代、校内のアンケートで、「仲間外れや無視をされる」などといじめを訴え、教員に自殺の意図を伝えた。しかし、教員に受け止めてもらえなかった上、教員は進学した中学校への引き継ぎも行わなかった。女子生徒は中学校入学後も「気持ち悪い」などと悪口を言われ、いじめを訴えたが、中学校の教員も適切な対応をしなかったという。
報告書は女子生徒についての計11事案を調査し、このうち10事案を複数の生徒による「いじめ」または「いじめに該当する可能性が高い」などと認定。「小学校在籍時から中学校入学後まで継続的に苦痛を感じる行為を受けていたと判断することができる」と指摘した。いじめと自殺の因果関係については「いじめ行為は、自死に至らしめる強い影響力があった」とした。
さらに「教員や学校が適切に受け止めて対応しなかったことによる徒労感、無力感も無視できない重要な影響力を有していた」と、学校側の対応も自殺の一因に挙げた上で、「生徒の継続的苦痛や自殺企図について明確に問題として認識し、適切に対応していた場合には自死を防ぐことができた可能性は十分にある」と結論付けた。
報告書を受け、市教委は再発防止策として、「いじめ防止基本方針」を改定し、「学校のいじめ対策組織にスクールカウンセラーらを構成員にすることを必須とする」「いじめの認知・解消については教職員個人に委ねず、組織で判断する」などと改める。また、市教委もいじめの対処や解消の状況を年4回調査し、学校への指導・助言体制を強化する。26日に校長らを集めた緊急集会を開き、周知、徹底する方針。【高山純二】
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