供述誘導主張の元市議への取り調べは「不適正」 最高検が認定へ

2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、東京地検特捜部の検事が元広島市議に不起訴を示唆して供述を誘導したとされる問題で、最高検が取り調べの手法が不適正だったと認定する方針であることが関係者への取材で判明した。ただ、組織的な指示は認められないとの結論になる見通し。年内にも調査結果を公表する方向で最終調整している。
供述の誘導があったと訴えているのは、元法相の河井克行元衆院議員(60)から現金30万円を受領したとして公職選挙法違反(被買収)に問われた元広島市議の木戸経康(つねやす)被告(68)=1審で罰金15万円の有罪、控訴中。20年3~6月に特捜部の任意聴取を受け、被買収容疑を認めたものの不起訴となった。しかし、検察審査会の「起訴相当」議決を受け、検察当局が一転して起訴した。元市議は公判で無罪を主張している。
元市議は特捜部検事による事情聴取の一部をひそかに録音していた。録音には検事が「議員を続けていただきたい」「克行を悪者にする」「不起訴やなるべく軽い処分にしたい」などと持ちかけるやり取りが記録されていたとされる。元市議側は「容疑を認めれば起訴されず、議員が続けられると思った」とし、検事の取り調べは違法な利益誘導だと主張していた。
関係者によると、最高検は、この検事や上司らへのヒアリングを実施。その結果、録音にあるやり取りは利益誘導と受け取られる恐れが否定できないと判断。一方で、誘導するよう上司から指示があったとの証拠は得られなかったという。
元市議は、河井元議員の公判での証人尋問前の「証人テスト」と呼ばれる打ち合わせの一部も録音しており、この場でも別の公判担当検事から証言の誘導があったと主張した。最高検は証人テストについても不適正なやり取りがあったと結論付けるとみられる。【井口慎太郎、北村秀徳、岩本桜、山田豊】

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