全国の警察で今年1~11月に認知した特殊詐欺被害のうち、電子マネーを購入させてだまし取る手口が過去最多となったことが、警察庁のまとめで分かった。特に2月から「アップルギフトカード」の悪用が急増。9月以降は被害の9割を超えており、警察庁は被害防止に向け、関係企業との協議を始めている。
電子マネーはアップルだけでなく、アマゾンやグーグル、任天堂など、多数の企業が導入している。特殊詐欺ではコンビニなどで電子マネーのカードを購入させ、カードに書かれた番号を電話で聞き取ったり、写真を送らせたりする手口が横行している。
レジでの決済が終われば、この番号だけで購入額分の電子マネーとして、さまざまなサービスに利用できる。1件当たりは上限額があるため被害額は大きくならないものの、振り込みやATMでの引き出しなどを省略することで、詐欺グループにとって足がつきにくくなる特徴があるとみられる。
警察庁によると、電子マネーを使った特殊詐欺被害の認知件数は、統計を取り始めた平成28年には1264件、被害額は約7億6千万円だった。翌29年に2888件、約15億4千万円とピークを迎え、その後、落ち着きを見せていたが、今年は1~11月だけで3055件、約18億6千万円と急増した。
使われた電子マネーの種類別にみると、未遂の8件を除いた全3047件の内、アップルギフトカードが使われた被害が1980件と突出。2月から急に増え、9月以降はほぼアップルギフトだけが使われている。警察庁の担当者は「アップルギフトカードは、電子マネーでスマートフォンやタブレット端末などアップル製品を購入できるため、転売して現金化しやすいと犯人グループに思われているのではないか」と推測する。
警察庁はアップル社に加え、家電量販店やコンビニなど電子マネーを購入できる店の運営会社などと協議を始めており、被害防止に向けた協力を呼び掛けている。