どういうつもりで「裏金キックバック」の中止を指示したのか。
自民党安倍派(清和政策研究会)のパーティー裏金事件を巡り、会長だった安倍元首相が昨年5月の派閥パーティー直前の4月にキックバックの取りやめを指示していたと朝日新聞(23日)が報じた。キックバックの中止は当時、事務総長だった西村前経産相らが協議の上、所属議員に周知されたが、反発を招き最終的に撤回されたという。
ジャーナリストの岩田明子氏が、夕刊フジのコラム(12日発行)で安倍氏が2021年11月の会長就任後、キックバックについて「このような方法は問題だ。ただちに直せ」と会計責任者を叱責、事務総長らにもクギを刺したと指摘していた。
これに沿った形の朝日の報道が出たことで、SNSでは〈安倍さんは裏のお金は無くしようと一つ一つやっていた〉〈先を見て指示するリーダー〉などと、安倍氏を持ち上げる声が次々と上がっている。
スキームを知っていたのは間違いない
しかし、不正を把握した安倍氏が正義感から「裏金キックバック」の中止を言い出したのかどうか。安倍派関係者はこう言う。
「裏金のキックバックは少なくとも20年前から行われていて、派内では『慣習』になっていた。当然、安倍さんが中堅・若手として所属していたころから行われていたわけです。安倍さんがキックバックをもらっていたかは不明ですが、昔からスキームを知っていたのは間違いないでしょう」
20日付のスポーツニッポンの名物コラム「永田町ウラ情報 政界噂の(秘)日誌」が興味深い。安倍派関係者が次のようにコメントしているのだ。
「安倍さんは“自分が(派閥の)会長になったんだから(裏金の)発覚に気をつけろ”と言っただけ。裏金に反対したなんてのは神格化が過ぎますよ」
実際、安倍氏の認識はその程度ではなかったか。派閥の不記載を刑事告発した神戸学院大教授の上脇博之氏が言う。
「安倍派のパーティー収入は18年の2億円台から19年に1億5000万円程度になり、20、21年に約1億円、22年は1億円を割っています。つまり、キックバックや中抜きによる裏金額が増えてきた可能性があるわけです。会長の安倍元首相が22年4月に『やり方を直せ』と強く指示したのなら、従う議員が増え、同年の収入は増えていなければおかしい。安倍元首相亡き後に、多くの議員が生前の指示を無視したというのは不自然です。実際は『やり方を直せ』ではなく『発覚しづらいやり方に変えろ』という指示ではなかったのか。安倍元首相の指示があったのかどうかを含め、疑問が残ります」
そもそも、安倍氏の関連する政治団体は13~19年の「桜を見る会」前夜祭の収支を全て不記載にしてきた経緯がある。この問題を巡っては、安倍氏の公設第1秘書が略式起訴され、安倍氏本人の監督能力のなさが明白になった。そんな人物が正義感から「不記載はやめろ」と指示するとはとても思えないのだが。