自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件は28日、東京地検特捜部が前日に続いて国会議員の関係先を捜索し、強制捜査の対象が広がった。「清和政策研究会」(安倍派)から高額のキックバック(還流)を受けた疑いが出ている大野 泰正 ・参院議員(64)。議員会館の事務所が捜索を受けても事件に関して説明することはなく、批判は日に日に高まっている。
「ご心配、ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。東京の方からも連絡がなく、この場では何も言えません」
官公庁などで仕事納めを迎えた28日。岐阜県羽島市にある大野氏の事務所では、秘書の男性が報道陣に対応し、頭を下げた。大野氏とは連絡が取れていないとし、自身が特捜部の事情聴取を受けたかどうかは「お答えできない。これだけにして」と話すにとどめた。
特捜部の係官ら6人が、東京・永田町にある参院議員会館に姿を見せたのは同日午前10時頃。大野氏の事務所の捜索は7時間半近くに及び、係官らは押収資料が入ったとみられる段ボールを次々に運び出した。東京・麹町にある参院議員用の宿舎と、大野氏が所有する東京都品川区のマンションも捜索対象となった。
大野氏は、自民党の副総裁や衆院議長を務めた大野伴睦氏を祖父に持ち、父の明氏は労働相や運輸相、母のつや子氏も参院議員を務めた政治家一家に育った世襲議員だ。事件では、派閥からパーティー収入の販売ノルマ超過分の5000万円超を還流された疑いが浮上している。
安倍派に所属する衆院議員の秘書は「伴睦氏の孫という知名度は抜群で、世襲議員として地盤が強く、大量にパーティー券を売れたのだろう」と話す。
事件を巡り、特捜部は19日、政治資金規正法違反(不記載、虚偽記入)容疑で東京都千代田区にある安倍派の事務所を捜索。27日には、同派から4000万円超の還流を受けたとされる池田佳隆・衆院議員(57)(比例東海)の議員会館事務所などの捜索にも入った。
2日連続して議員側への捜索が行われ、事件は新たな局面を迎えたが、大野氏は公の場で事件について説明していない。
大野氏が岐阜県議時代の約20年前から支援しているという後援会幹部の男性は、「本当に市民、県民のことを思うなら、自分が関与したことをきちんと説明すべきだ」と強調する。
大野氏側を通じて安倍派のパーティー券を買ってきたという岐阜県の男性(51)は「数千万円の大金をどこに使ったのか、想像がつかない」と話し、「臆測が臆測を呼び、議員や政治に対する不信が募る。有権者に真実を明かしてほしい」と訴えた。