揺れと津波で壊滅「もう涙も出ない」 助けも情報もない孤立集落、自失の中で支え合い

最大震度7を観測した能登半島地震では、石川県珠洲(すず)市の沿岸部にある複数の集落が孤立状態となっている。その一つ、同市三崎町は地震による家屋倒壊に加え、津波の被害も受けた。「もう涙も出ない」。変わり果てた街の姿に茫然(ぼうぜん)自失の住民たち。なかなか助けは来ず、情報も伝わらない。それでも支え合って暮らしている。
沿岸の民家は地震でほぼ崩落。その後の津波で民家の木材や瓦、日用品、洋服などが流され、発生4日目になっても至るところに落ちていた。
大きな人的被害はなかったという三崎町の大浜地区。しかし、発生直後から電気や水は止まった。「家は全壊。車もだめになってしまった。腰も悪いのでどこにも行けない」。集会所で暮らす無職の舟木長明さん(69)は肩を落とす。
地区内にある約30軒の民家はほとんどが住めない状態となり、住民らは避難所や集会所に身を寄せている。自宅からかろうじて持ち出した水や食料を分け合い、薪を割って沸かした湯で皿を消毒し、食事をして飢えをしのいできた。
地区の窮状はなかなか伝わらず、支援は遅れた。それでも、4日昼にやっと市から水が配給された。住民らは、さらなる支援が来るまで励まし合って生きていく。
「もう涙も出ない。これだけのことがあったんだから、大きな宝くじでも当たるだろう」。倒壊した自宅の片付けをしていた森林業の上濱修平さん(69)は、こう言って笑った。(前島沙紀)

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