深々と礼する被災者 隊長が言葉に詰まった場面 能登半島地震

石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震を受け、1日に現地へ出発した和歌山県編成の緊急消防援助隊第1次派遣隊142人が5日帰県した。このうち、和歌山市消防局から派遣されていた47人は同日午前、消防局庁舎に大型バスで到着。多くの家屋が倒壊し、道路網が寸断されるなど、甚大な被害を受けた現地の様子を報告した。【加藤敦久】
第1次派遣隊は1日夜に県内を出発し、2日以降、金沢市や志賀町など同県各地で活動。病院間で患者を運ぶ「転院搬送」をしたり、地元の医療不足を補うために急病人やけが人の搬送をしたりした。また、今後の派遣部隊のための準備や、現地の状況の調査なども行った。
「能登半島先端の地域に行ったが、現地は穏やかな漁村で、木造の民家が密集している箇所が点在していた。そこでは家屋の8割、9割が損害を受け、半分ほどが全壊しているように見えた」。現地の惨状を目の当たりにした黒田滋之大隊長(53)はそう振り返る。路面には至る所に亀裂や隆起があり、ジグザグ走行をしながら進んだ。緊急地震速報の警報が頻繁に鳴って、そのたびに活動を停止して安全を確保した。「早くなんとかしてやりたい、住民の命を救いたいという気持ちはやまやまだったが、消防車両が入っていけない状態もあった」
黒田大隊長は1995年の阪神大震災でも現地に派遣されたが、今回経験した自然災害の悲惨さは想像以上だった。「立ち尽くしている人が多かった。人間はああいう時は涙が出ないですよね、恐らく。安否が分からない家族がいて、建物に人が取り残されている状態なんですけど、助けが届かない要救助者や家族がたくさんいる。その助けが一日でも早く届けられるようにしたい」。ある場面を思い出した時は言葉を詰まらせた。「被災地の方々が深々と頭を下げられるんです。なんとかしてやりたいと思った」
第2次隊140人もすでに派遣されており、援助隊は交代で被災地入りする予定となっている。

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