日本年金機構の30代の元職員の男性が上司のパワーハラスメントによって適応障害を発症し、三鷹労働基準監督署(東京)が労災認定していたことが12日、判明した。男性が東京都内で記者会見を開いて明らかにした。男性は注意欠陥多動性障害(ADHD)を理由に退職の強要もされたとして、同日、年金機構に対して慰謝料などを求めて東京地裁に提訴した。
男性と弁護士によると、男性は2018年に年金機構に就職した。19年9月に中央年金センターに異動後、書類のチェック作業に従事。上司は男性のミスを見つけると「あなたがミスをしたら理事長が頭を下げることになるんだよ」「新聞沙汰にもなるんだよ」と机をたたきながら大声で叱責するなど、日常的に暴言を浴びせ、男性があいさつしても無視したという。
男性は適応障害を発症し、20年1月から休職。22年5月に労災認定された。
また、男性が休職中に別の職員との面談でADHDの診断を受けていることを伝えたところ「そういうことであれば働ける場所はない」などと言われ、退職手続きの書類を送られて、退職を強要されたという。
男性は「(同機構は)厚生労働省所管の機関として、ハラスメントのない働きやすい職場になってほしい。この訴えが社会全体で発達障害者やその雇用について考えるきっかけになれば」と話した。
日本年金機構は国からの委託で公的年金の支給や保険料徴収を担う組織。【藤沢美由紀】