地検特捜部の腰砕け? 安倍派裏金問題は収支報告書の「一斉訂正」で“手打ち”か

自民党派閥パーティーの裏金事件は、大山鳴動してネズミ3匹か──。自民党内では「捜査はヤマを越した」と安堵の声が広がっているという。
自民党の浜田国対委員長が12日、通常国会を26日に召集する政府方針を野党に伝達。召集日までには東京地検特捜部の捜査も一段落する見込みだ。
そんな中、地検が任意聴取を行うなど捜査を進めてきた安倍派と二階派が、来週にも派閥と所属議員の政治資金収支報告書を一斉に訂正することが報じられた。
安倍派が収支報告書の収入に記載してこなかった裏金は、直近5年間で約6億円、二階派も約1億円に上るとされる。
訂正の際は、裏金化していた分を派閥の収入として記載し、議員に還流してきた分も支出として記載する。そうするとキックバックを受け取った議員側も収入として収支報告書に記載しないと整合性が取れないため、「一斉訂正」が必要になる。
安倍派は所属議員98人のうち80人程度がキックバックを受けていたという。収支報告書の訂正内容も踏まえて、地検は安倍派議員の刑事処分の可否を判断するもようだ。
「4000万円以上を受け取っていた池田佳隆衆院議員(7日に逮捕)、谷川弥一衆院議員、大野泰正参院議員の3人は立件を免れないようですが、派閥側は収支報告書を正直に訂正することで検察と握ったという噂が流れている。記載すれば裏ではなく表のカネになりますから。ただ、議員側はキックバックの額が明らかになってしまうことを嫌がり、収支報告書に書きたくないという人もいる。派閥側にキックバック分は返すから“なかったこと”にできないかという問い合わせもあるようです」(安倍派の議員秘書)
■「ここで膿を出し切らないと、裏金問題は必ずまた起こる」
収支報告書の訂正で裏金事件を終わらせる“手打ち”の可能性があるということだが、今さら表面上の体裁を整えたところで、派閥ぐるみで裏金づくりに励んでいた事実は消えない。こんな幕引きを許していいのか。
安倍派幹部は地検の聴取に対して「キックバックは会長マターだった」と説明しているという。公訴時効にかからない直近5年間で派閥会長を務めた細田前衆院議長と安倍元首相はともに死去。“死人に口なし”で事実関係を調べようがないし、国会召集日まで残された時間も少ない。それで還流額が大きい3議員だけが立件され、派閥幹部が逃げ切りでは国民は納得しないだろう。
「ここで膿を出し切らないと、裏金問題は必ずまた起こる。政治とカネの問題を根絶するには、企業献金やパーティーを禁止するしかないでしょう。ただし、派閥会長や事務総長経験者など、裏金事件で告発された議員については、今回の捜査でたとえ不起訴になっても、検察審査会でクロ認定される可能性がある。検察審査会が市民感覚から『起訴相当』の議決を2回出せば強制起訴になります。それでも無罪放免にするのか、検察に対しても国民は厳しく監視し続ける必要があります」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
検察は決して正義の味方ではない。政治的な思惑で動き、恩を売った方が得策だと判断すれば権力に忖度してきた。だが、国民が注視する裏金事件が腰砕けに終われば、怒りや批判が検察に向かうのは必至だ。

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