被災地、空き巣や悪質訪問販売…「便乗犯罪」相次ぐ 高級ミカン泥棒も

元日の発生から19日目を迎えた能登半島地震の被災地では、混乱に便乗した空き巣や悪質商法などが相次ぎ確認されている。平成23年の東日本大震災の際も、住民不在の民家や店舗を狙った窃盗事件が発生。警察当局は被災地周辺でパトロールを強化し注意を呼び掛けているが、空き巣などに対する被災者の不安が2次避難遅滞の一因になっている可能性もある。
1月5日朝、石川県輪島市で倒壊家屋の片付けをしていた住民の女性が、民家から箱を持って立ち去る若い男を目撃した。地域では見かけない顔だ。「何しているんですか」。不審に思った他の住民らとともに男を取り囲み、近くにいた警察官に引き渡した。
箱に入っていたのは高級ミカン。男は愛知県から来たという自称大学生(21)で、70代男性の家から高級ミカン6個(時価計約3千円相当)を盗んだ窃盗容疑などで石川県警に逮捕された。
県警によると、17日夕時点で地震に乗じたとみられる空き巣や置引などの被害は県内で24件確認されている。被害相談は増加傾向にあり、被災時に宿泊していた旅館や避難所にいる間に現金が盗まれたケースもあった。
また、地震を利用した悪質商法も多発。石川県警には、地震関連商品の訪問販売で高額な支払いを要求されたなどとする相談が90件以上寄せられている。特に目立つのが被災家屋にブルーシートの設置を促すケースで、契約書の交付もないまま代金の請求をされた人もいたという。
隣の富山県でも、住民が業者を名乗る人物から突然「屋根瓦の修理をしないか」と持ちかけられた事案が発生している。
こうした犯罪を抑止しようと、石川県警は地震の翌日から移動交番車で避難所を回り、不審者の警戒や被災者への注意喚起を実施。警視庁なども約210人態勢で輪島市や珠洲(すず)市を中心に巡回を強化している。富山県警も移動交番車を走らせ、警戒を強める。
警察庁もX(旧ツイッター)で、地震に便乗した不審な電話や訪問への注意を呼びかける。「怪しい」と思ったら、近くの警察署や警察相談専用電話(#9110)に相談するよう求めている。
警備大手「ALSOK」(東京)は災害時でも窃盗犯が嫌うのは「人の目」だと指摘。「地域住民らで見回りをしたり、住宅街に見張り役の人を配置したりすることが、防犯対策として有効になる」としている。(宇山友明)

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