不記載「長年の慣行」…一時は還付廃止の動き、止まった経緯に西村氏「詳細控える」

自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、安倍派などの会計責任者や現職議員ら計8人が19日に立件された。「5人衆」と呼ばれる安倍派幹部や高額のキックバック(還流)を受けていた議員らが次々に謝罪や釈明をしたが、還流について具体的な説明は聞かれなかった。

「歴代会長と(会計責任者の)事務局長の間で、長年、慣行的に扱っていた」。2021年10月~22年8月に、派閥の事務を取り仕切る事務総長を務めた西村康稔・前経済産業相(61)はこの日、党本部で記者会見を開き、還流についてそう説明した。
安倍派では、パーティー券のノルマ超過分を所属議員に還流し、派閥、議員側双方の政治資金収支報告書に記載していなかった。
西村氏は不記載についても「長年の慣行」とした上で、会長以外の幹部は関与しておらず、自身も「問題が表面化するまで知らなかった」と釈明した。
22年4月頃に、当時会長だった安倍晋三・元首相から「還付をやめよう」と言われたとし、幹部の中で廃止する方向で協議していたが、最終的には、一部議員に還付されたと説明した。
具体的な経緯について「詳細は控える」としつつ、「私が還付や収支報告書への不記載を指示したり、了承したりしたことはありません」と強調した。

西村氏の会見に先立ち、安倍派は19日夕、党本部で臨時総会を開催した。総会終了後に記者会見した同派座長の塩谷立・元文部科学相(73)は「長年、事務局から議員事務所に記載をしなくていいということが伝えられていた」と述べ、不記載は派閥主導で行われていたことを認めた。
ただ、還流の開始時期については「明らかではない」とし「不記載の状況も全く知らなかった」と釈明した。
塩谷氏は「不正な利用はなかった」と強調。「将来的には(使途の)調査も検討する」とした。
会見に同席した現事務総長の高木毅・前国会対策委員長(68)は「ノルマ以上のものを還付するのはよくないんじゃないかと思った記憶はある」と話し、自身への還流分について「交通費など、自身の政治活動費に使っていた」と説明した。
事件について、松野博一・前官房長官(61)は、「過去に事務総長を務めた一人として重く受け止め、深くおわびする」とのコメントを発表した。派閥から自らに還流された資金については「適正に処理されているものと認識していた」と釈明し、不正な支出も否定した。
世耕弘成・前党参院幹事長(61)も党本部で記者会見し、「政治資金の管理については秘書に任せきりの状況だった」と釈明。「私の管理監督が不十分だったとの指摘は否定できない」と語った。
萩生田光一・前党政調会長(60)は「私自身の政治資金については後日、説明する機会を設けたい」とのコメントを出した。

事件で在宅起訴された大野泰正参院議員(64)(岐阜選挙区)。19日夕、東京・永田町の参院議員会館内で記者会見を開き、「経理面は全て事務所のスタッフに任せていた」と述べ、事件への関与を否定した。
大野氏は「検察と意見の相違があり、裁判でしっかりと主張したい」と強調。議員辞職については「やましいことはない」と否定した。
大野氏が事件について公の場で説明するのは初めてだったが、約30分間の会見では「回答を差し控えたい」と繰り返し、還流分の使途も明らかにしなかった。
略式起訴された谷川弥一衆院議員(82)(長崎3区)は「国民、長崎県民の皆様に深くおわび申し上げる。今後の手続きを見ながら、自らの進退について報告したい」とのコメントを出した。
一方、安倍派の橋本聖子参院議員(59)は臨時総会後、報道陣に対し、派閥から2057万円の還流があったことを明らかにした。橋本氏は「活動費としていただいていたという認識だった」とし、後日、政党支部の収支報告書を訂正するという。

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