自民党派閥のパーティー収入不記載事件で、同党の「ケジメのつけ方」に疑問が噴出している。先週末、東京地検特捜部の刑事処分を受け、岸田派(宏池会)と二階派(志帥会)、安倍派(清和政策研究会)が解散を表明した。だが、事件については核心に踏み込まず〝事務方の責任〟を強調する釈明が相次いでいる。22日午後、岸田文雄首相(総裁)が本部長を務める政治刷新本部で「派閥の是非(ぜひ)」が議論されるが、国民はそれで納得するのか。
「派閥を解散すれば、すべての問題が解決するとは考えていない」
茂木敏充幹事長は21日のNHK番組で、一連の事件を受けた党改革についてこう語り、自身が会長を務める茂木派(平成研究会)の存廃について明言を避けた。
岸田首相は18日、「岸田派の解散」を突然表明した。事件の中核となった、安倍派と二階派は続いたが、首相が党内に根回しをしなかったため、反発も出ている。
麻生太郎副総裁率いる麻生派(志公会)は「派閥解散を見送る意向」で、茂木派と森山派(近未来政治研究会)は、政治刷新本部の中間報告を踏まえて判断するという。
国民世論も厳しい。
読売新聞が22日朝刊で報じた世論調査によると、岸田内閣の支持率は政権復帰後最低だった昨年11月と同じ24%。自民党の政党支持率も25%(前回28%)だった。政治刷新本部にも「期待できない」が75%に上った。
朝日新聞が同日報じた世論調査でも、内閣支持率は23%で、政権復帰以降最低だった前回12月調査と同じ。派閥解散は政治の信頼回復に「つながらない」とする回答が72%に達した。
解散表明した派閥幹部らは、還流(キックバック)が党側と派閥の会計責任者の間で行われた〝慣行〟とする説明に終始しているが、国民の理解は得られていない。今後、政治家の説明責任を問う声が強まることは必至だ。
こうしたなか、岸田首相は21日夜、麻生氏と約2時間、会食した。一部報道によると、岸田首相は事前に相談せずに派閥解散を表明したことをわびたという。
今後の展開はどうなるか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「国民が求めるのは、第1に『政治とカネ』の問題根絶と、事件の『全容解明』だ。まずは政治資金規正法の厳罰化、裏金リストをすべて公表するのが政治責任だ。岸田首相は焦点を外すかのように派閥解散を打ち出したが、決定的にピント外れだ。国民が関心を寄せる本質に切り込まないと、さらなる怒りを招き、底なしの支持率低迷となるのではないか」と指摘した。