道路の寸断が生む孤立と支援の停滞…灯油が届かず寒さで命の危険も 能登半島地震で見えた冬の災害の「課題」と「備え」 記者が見た被災地

HBCの記者が能登半島地震の被災地を取材しました。 北海道への教訓も見えてきました
今月20日。HBCの取材班は、JNN取材団の一員として能登半島に入りました。 目指したのは半島先端部の石川県珠洲市です。 未だ、ほぼ全域で断水が続き、被害の全容は把握しきれていません。
長沢祐記者 「津波の被害があった珠洲市の海岸線に来ています。ほとんどの家屋が被害にあっていて、角度を変えて陸の方に行ってみても、倒れた家屋、そしてがれきが散乱しています」 「こちらは珠洲市の三崎町というところに来ています。こちらは津波の被害が大きかったところですが、川に車が落ちてしまっています」
教育の問題も山積しています。 雨の中、集まってきたのは地元の中学生とその親たち。

この日、中学生100人が、100キロ離れた金沢市内の施設で授業を受けるため、集団避難することになりました。
濱田真桜さんは、家族5人が見送りに来ました。
濱田真桜さん(中2) 「ちょっと不安ですけど、友達と会えるので楽しみ。勉強を頑張りたいです」
真桜さんの妹(7) (お姉ちゃん今日行っちゃうけどどう?)「嫌だ」 (お姉ちゃんはどんな人?)「一緒に遊んでくれる」
家族 「なんかあったらちゃんと連絡してよ、頑張って!」 「もう頑張って来いと、それだけ。病気もしないようにね」
一方で、集団避難をしない選択をした中学生もいました。
小町一嘉さん(中1) 「友達が行くので見送りに来た。家族と離れるのが嫌。不安だから」 (友達とあいさつできました?)「はい」 (どんな会話を?)「頑張ってねって。ちょとさみしい」
そして、冬の災害の一番の課題は「寒さ」です。
珠洲市民 「心配どころか心配で心配で。(雪の対策は?)まだなんにもしてませんよ」
大雪が予想されていた前日。 開店前のホームセンターには、灯油のポリタンクなどを求める客で行列ができていました。
買い物に来た人 「大雪になるというからストーブの準備しとかないと。入れ物のタンクを買って油入れとこうと思って」 「買えました(ポリタンク)。灯油、まだ配達してもらえないからね」
暖房に欠かせない燃料も、自由に手に入らない状況が続いています。
長沢祐記者 「珠洲市内の体育館には全国から集められた支援物資が届けられています。これを各避難所のニーズに合わせて毎日運んでいくということです」
自衛隊などが、灯油をはじめとする支援物資を市内の各避難所に運び、被災者の生活を支えています。
物資管理担当者 笠原太一さん 「道路状況、車の安全を最優先させ、必要なものを届けるために、自衛隊や民間に力を借りながら、物資をなるべく届けるように努力していきたい」
取材した長沢祐記者は地震発生から3週間のタイミングで現地に入りましたが、道路もひどい状況で水道も復旧していなかったと話します。
長沢祐記者 「被災者の方たちは今日をどう生きるか、明日どう生きていくかに必死な状況で、復興にはまだまだ時間がかかると感じます」
また、被災地支援で一番の障壁は道路の問題だったそうです。
長沢祐記者 「金沢市内から能登半島先端の珠洲までは約150キロ。そのほとんどの道が地割れや土砂崩れで寸断されていて、行くのにも時間がかかり、消防、自衛隊、警察、医療関係者などの車で今もなお毎日渋滞しています。支援のスピード感に遅れが生じてしまっています。今回の取材で、道路の寸断などで孤立してしまった場合も前提にした、拠点づくりが必要だと感じました。大規模な拠点が1つあるよりも、小規模なものをいくつ用意できるかが、被災地での課題だと感じます」
冬に起きた災害ということで、被災地では灯油の確保に苦労されている状況もありました。
長沢祐記者 「現在、灯油の配送はできず、販売店も限られています。今は自衛隊が毎日避難所などに届けていますが、住民の方は、支援が届くまでの数日間、寒さで命の危険を感じたと話していました」
授業を受けるための中学生の集団避難については…。
長沢祐記者 「現地では、中学校がまだ避難所として使われていて、通常通りの授業は再開できていません。避難先の教育環境、現地での教育環境、この両方をどう担保していくかが直近の課題です。教員の数も足りておらず、県内から希望者を募っている状態です」
また、たくさんの支援スタッフが県外からも入っている中でも、課題があるといいます。
長沢祐記者 「道路状況がよくないことで宿泊施設もありません。そのことで1週間シャワーを浴びられていないという状況で支援にあたっているスタッフもいました。宿泊施設を被災地に近づけていくことが、復旧につながっていくと感じました」
まずは、被災地の方々に寄り添いながら、自分の住む地域の防災も見直していきましょう。

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