難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の林優里(ゆり)さん=当時(51)=への嘱託殺人罪などに問われた医師の大久保愉一(よしかず)被告(45)の裁判員裁判公判が29日、京都地裁(川上宏裁判長)で開かれた。起訴後に被告を精神鑑定した医師が弁護側の証人として出廷し、被告が自閉症スペクトラム障害(ASD)であるとの診断結果を示した。
出廷した京都大医学部付属病院の精神科医、磯部昌憲氏によると、ASDは対人関係能力の低さなどが特徴とされる発達障害の一つ。
大久保被告は共犯として起訴された元医師の山本直樹被告(46)の父、靖さん=同(77)=への殺人罪にも問われている。大久保被告はこの事件について、山本被告の単独犯行であり、実際に同被告が殺害を行動に移すとは考えていなかったと主張している。
磯部氏はこの日、ASDの影響で対人関係の構築が難しい大久保被告が、自らの考えを押し殺して相手の要求に応じるようになっていたと指摘。大久保被告は事件前、靖さんの殺害計画を肯定していたとみられるメールを送っているが、磯部氏は山本被告との関係維持のために表面的に同調していた可能性があると述べた。
またこうした特徴は、死を願っていたALS患者の林さんとのメッセージのやり取りとも構図が似ているとした。