進まぬ耐震化、被害拡大要因か 能登半島地震 死因9割「家屋倒壊」全国で同様の懸念

最大震度7を記録した能登半島地震では、多くの人々が倒壊した家屋の下敷きになるなどして命を落とした。平成7年の阪神大震災以降、国は住宅などの耐震化の重要性を訴えてきたが、過疎地の住宅の老朽化や耐震化の遅れなどが被害拡大を招いた可能性がある。全国的にも耐震性が十分でない戸建てが数百万単位で残されており、同様の被害が繰り返される懸念は払拭できていない。
石川県によると、能登半島地震の住宅被害は2日時点で、4万9千棟を超える。死者は災害関連死15人を含む240人で、県が氏名を公表した129人のうち、86%にあたる111人の死因が家屋倒壊だったことが判明している。
国内では、現在の仙台市域で4千戸以上の住宅が全半壊した昭和53年の宮城県沖地震後、耐震基準を改定。56年以降につくられる住宅・建築物に対しては、震度5強程度の地震ではほとんど損傷せず、震度6強から7程度の強い地震でも人命に危害を及ぼす倒壊などの被害を起こさないといった新基準を設けた。
さらに、地震による直接的な死者の約9割が建物の倒壊などが原因だった阪神大震災を受け、国は「耐震改修促進法」を制定。56年改定の耐震基準を満たさない古い住宅については、所有者に耐震診断や改修の努力義務を課すなどした。
国土交通省によると、平成30年時点で全国の住宅の耐震化率は約87%。戸建て住宅に限ると約81%に下がり、約560万戸が「耐震性不十分」であると推計される。
過疎地では高齢化も耐震化を躊躇する要因になっているとみられ、能登半島地震の被災地では、石川県輪島市と珠洲市の住宅耐震化率はそれぞれ約45%、約51%だった。
また、現行耐震基準前の昭和55年以前に建てられた住宅の比率は珠洲市が65%で、総務省が調査した全国の市区町村で最も高い。能登町(61%)が上から2番目、輪島市(56%)が5番目となり、能登半島で住宅の老朽化が際立っていた。
南海トラフや首都直下など、近い将来に発生が危惧される巨大地震は少なくない。国交省は「令和12年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消」との目標を掲げているが、対策は急務だ。(宇都木渉)

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