能登半島地震の一部の避難所で、女性スタッフが運営に参加して、過ごしやすい環境づくりに一役買っている。男性中心に進められがちな急場の集団生活に、女性の視点を取り入れる試みが進む。(井上大輔)
最大800人超が避難した石川県 珠洲 市の飯田小学校。住民らで構成する運営スタッフ8人のうち、3人が女性だ。
授乳室を設け、学習支援のNPOと連携して勉強などができる子供部屋もつくった。保健室には、支援物資の生理用品や乳児用おしり拭きが仕分けされて並び、女性の民生委員も交代で常駐している。生理用品を受け取った避難者の女性(49)は「周囲を気にしないで助かる」と話す。
運営責任者の泉谷信七さん(73)は「男の気付かないことも多く、やはり女性の意見は貴重だ」と語る。
東日本大震災では、避難所に女性用の物干し場や更衣室がない点が指摘された。国と自治体は、地域の自主防災会議などの組織に女性メンバーを増やし、声を反映させやすい仕組みづくりを進めてきた。
2020年に内閣府が示した避難所運営の指針は、トイレ・更衣室を男女別とし、管理責任者に女性と男性の両方を配置することなどを求めている。
今回の被災地では、穴水町で全30か所ある避難所のうち2割ほど、能登町でも全47か所の多くで女性スタッフが関わっている。
自治体から応援職員として派遣される女性もいる。福井県からはこれまでに女性職員41人が珠洲市に入った。避難所の運営改善を求める声を拾ったり、防犯ブザーを配ったりしている。
ただ、こうした取り組みが進まない避難所も少なくない。珠洲市の別の避難所のスタッフは男性のみだった。運営責任者の男性は「支援物資を女性用に仕分けして受け渡しできるほど、人手に余裕はない」とため息交じりに語った。