窯がまた崩れた… 8カ月で地震被害2回 再建誓う「珠洲焼」作家

能登半島地震で、石川県珠洲(すず)市特産の陶磁器「珠洲焼」関係者も被災した。各工房や市陶芸センターの窯が崩れたほか、多くの完成品も壊れた。2023年5月の地震で被災した窯が再度被害を受けたケースもあるが、作家たちは復活を期している。
12~15世紀には生産されていたとされる珠洲焼は、色やつやを出す釉薬(ゆうやく)を使わず、灰黒色の仕上がりが特徴。一度途絶えたものの1970年代に地元作家が再興し、能登半島を代表する伝統工芸品の一つとして知られるようになった。
元日の地震では、多くの作家の自宅や工房が被災した。珠洲焼作家約40人でつくる「創炎会(そうえんかい)」代表、篠原敬さん(63)の工房(同市正院町平床)では、約4000個のレンガを使った窯が壊れた。この窯は23年5月5日に最大震度6強を観測した地震で崩れ落ち、10月に再建したばかり。1月20日に再建後、初の火入れをする予定だった。棚に並べていた完成品も多くが壊れた。「また崩れてしまったか」。篠原さんは大きなショックを受けたという。
そんな篠原さんが前を向けたのは、周囲の温かい支えがあったから。昨年の窯の再建に協力してくれた人たちから「地震に負けずに頑張って」「再建をまた手伝わせてほしい」といった声が相次いだ。若手作家からも「珠洲焼を続けましょう」と励まされた。篠原さんは「応援してくれる人がたくさんいて、諦めるわけにはいかないという気持ちになった」と力を込める。
さらに、他県の工芸仲間からもエールがあった。岡山県の備前焼作家たちからは、窯を失った珠洲焼作家に工房と住居を無償で貸し出すという申し出を受けた。篠原さんは「珠洲焼のために力を貸してくれることに感謝の気持ちでいっぱいだ。なんとしても窯を再建して、珠洲焼を今後も継承していきたい」と話す。仮設住宅に入居して少し落ち着いたら、もう一度、窯の再建に取りかかるつもりだ。【井村陸】

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする