兵庫県稲美町で令和3年11月、民家が全焼し小学生の兄弟が死亡した事件で、殺人と現住建造物等放火の罪に問われた兄弟の伯父で無職、松尾留与（とめよ）被告（53）の裁判員裁判の論告求刑公判が7日、神戸地裁姫路支部（佐藤洋幸裁判長）で開かれた。検察側は死刑を求刑し、弁護側は死刑の回避を求めて結審。判決は15日に言い渡される。被告は最終意見陳述で「言うことはありません」と述べた。
検察側は、最愛の子供を殺害することで両親を苦しめたいという動機は極めて身勝手で、非人道的と指摘。「最大限の非難に値する」と述べた。論告に先立って父親が意見陳述し、「命をもって償ってもらいたい」と訴えた。
一方、弁護側は、家族間のトラブルに端を発したもので「動機が悪質とまでは言えない」と主張。軽度知的障害の影響によって、適切な判断ができないまま精神的に追い詰められて犯行に及んだとし、「死刑は相当ではない」とした。
起訴状によると、松尾被告は3年11月19日午後11時35～50分ごろ、稲美町の当時の自宅にガソリンをまいて放火。小学6年、松尾侑城（ゆうき）君＝当時（12）＝と同1年、真輝（まさき）君＝当時（7）＝の兄弟を殺害したとされる。
公判で被告は、起訴内容を認める一方、両親に対し「あいつらの一番大切なものを奪って俺の苦しみを分かってもらいたかった」などと発言。両親への謝罪の気持ちについて「一切ない」と述べている。