能登半島地震でホテルや旅館へ避難している「2次避難者」に対し、石川県は7日、今後の住居に関する説明会を始めた。県は応急仮設住宅に移るなど四つの選択肢を提示し、現在いるホテルなどの利用は2~3月までと伝えた。だが、最も希望者が多い仮設住宅は戸数を十分に確保できていない。県は2次避難者5000人超から意向を聞き取るが、初日は不安や戸惑いの声が相次いだ。(池下祐磨、古渡彩乃)
県が移動先として4つの案
「3月上旬が利用期限です」
県有数の観光地、加賀市・山代温泉の高級ホテル「みやびの宿 加賀百万石」で、避難者210人を前に県の担当者が説明した。同ホテルは最も多い300人超の2次避難者を受け入れている。
この日、県が示した選択肢は、▽地元の仮設住宅▽民間住宅を県が借り上げる「みなし仮設住宅」▽公営住宅▽修繕して自宅に戻る――の4案だ。
圧倒的に希望者が多い仮設住宅は、3月末までに3000戸着工する計画だが、申し込みは7000件を超え不足している。みなし仮設住宅や公営住宅は県外の物件が多く、地元に近い場所を希望する避難者からは敬遠されかねない。説明会では調査用紙も配られ、避難者は約1週間で回答するよう求められた。
避難者からは戸惑いの声が上がった。避難所3か所を回って同ホテルに来た 珠洲 市の自営業男性(65)は「ようやく落ち着いたところだったのに。地元から遠くなれば職探しも必要で、涙が出る」と肩を落とした。輪島市の病院事務員の女性(60)は「壊れた家を修理して父と暮らしたいが、 罹災 証明発行のめどもたっていない。1週間ではとても決められない」と不安を募らせた。
集落単位で避難している住民からは「知らない人ばかりの中では暮らせない」「ばらばらになるのが心配だ」などの声も出た。
これまで県は「災害関連死」を防ぐため、自治体が開設する避難所からの2次避難を呼びかけてきた。県によると2次避難者は7日現在で5209人。ホテルなど243か所に身を寄せるが、その大半は2~3月に受け入れの期限を迎える。
避難者に移動を促さざるを得ないのは、北陸新幹線の延伸開業が来月16日に迫っている事情がある。コロナ禍で苦しんできた宿泊施設にとって新幹線延伸への期待は大きく、観光客の増加を見込んだ準備が急務となっている。避難者の受け入れが長引けば、本来の業務に支障が出る恐れもある。
県内の旅館関係者は「リフレッシュに来る観光客が、被災者がいる旅館で落ち着けるのかという不安はある。もちろん、手荷物一つで来た避難者に『出て行け』と言えるはずもない」と打ち明ける。
県は2次避難者に対し、一時的にみなし仮設住宅や公営住宅へ移り、仮設住宅の整備後に地元へ戻るプランを勧める。県の担当者は「地元の仮設住宅の数は限られる。避難所にいる1次避難者も含め、希望に沿えるよう努力するので理解してほしい」と話す。