孤独にさせない、心がけを 京アニ遺族がカウンセリング必要性訴え

36人が犠牲になった2019年の京都アニメーション放火殺人事件で命を落とした渡辺美希子さん(当時35歳)の母達子さん(73)と兄勇(いさむ)さん(45)=いずれも滋賀県=が9日、大阪市の府警本部で講演し、犯罪被害者がカウンセリングを受ける大切さを訴えた。1月に死刑判決を受け控訴中の青葉真司被告(45)に「裁判が完全に終わったわけではなく、気持ちの整理はついていない」と話した。
美希子さんは大学卒業後、アニメの専門学校に通い、08年に京アニに入社。「境界の彼方」などの作品で背景画を担当する美術監督を務めた。
臨床心理士のカウンセリングを受けた勇さんは「受けていなかったら今の精神状態が保てていたか不安だ」と明かす。事件当初は、妹を失った心の傷を認めたら生活に支障が出ると思いカウンセリングをためらったといい、「支援を受けたくないと話す被害者にも支援団体が声を掛けていただけたら、私のように救われるのではないか」と話した。
勇さんの息子は美希子さんと同じ誕生日に生まれた。「生まれ変わりのようなメッセージを感じた」。京都地裁で殺人などの罪に問われた被告の公判を傍聴した勇さんは「大切な妹を奪った被告を前に、理不尽だと思いながらも被告の証言を聞いていた」と振り返る。
事件は防げなかったのか。「身近にいる人がつらそうにしていた時に、孤独にさせない心がけができたら、今回のような事件が起きないのかなと感じている」と締めくくった。
講演は、認定NPO法人「大阪被害者支援アドボカシーセンター」や府警など36の団体・機関でつくる「府被害者支援会議」が開き、約60人が耳を傾けた。【洪香】

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