今、狂犬病ワクチンの接種率が減少傾向にあります。飼い主の義務でもある予防接種。その必要性についてアニホック動物病院グループ総獣医師長の藤野洋氏に聞きます。
「狂犬病」 人が発症したら致死率ほぼ100%”
狂犬病には「犬」という字が使われていますが、全ての哺乳類が感染する可能性があります。(人から人への感染は無し)噛まれたり、引っ掻かれたりすることで傷口から感染します。
潜伏期間は1~3か月で、人における主な症状は、発熱・頭痛・おう吐・幻覚・けいれん・恐水症など。昏睡状態に陥り呼吸不全で死亡に至ります。適切なワクチン接種で発症を防ぐことができますが、一旦発症した場合、致死率はほぼ100%という恐ろしい病気です。
主にアジアやアフリカ地域で毎年約5万人以上の死者が出ています。
日本では1957年以降、発生していません。1950年に「狂犬病予防法」が施行され、犬の登録や予防接種の義務化、野犬等の抑留がなされたことで、7年という短期間で狂犬病を撲滅することができました。
なぜ予防接種が必要なのか
海外では、今も多くの地域で狂犬病が発生しています。現在、狂犬病が発生していない清浄国・地域は▼日本▼オーストリア▼アイスランド▼ニュージーランド▼グアム▼ハワイ▼フィジー諸島の7つです。
厚労省HPによると、ネパールやフィリピンに旅行や滞在していた人が、日本に帰国してから発症して死亡するというケースが1970年、2006年、2020年に報告されています。
飼い犬に狂犬病の予防注射を接種することで犬でのまん延が予防され、人への被害も防ぐことができます。万が一狂犬病が侵入した場合に備え、日本では飼い犬への狂犬病予防注射を義務づけています。
コメンテーター 高橋ユウ:びっくりしました。すごく身近なアジアとかでも狂犬病が出ているんだなと。先日フィリピンに行ったばかりなんですけど、確かに野良犬を見るんですよね。
義務でも接種率は約7割
狂犬病の予防注射の接種率を見ると、1969年には接種率が99.2%でしたが徐々に低下し、2022年には70.9%まで下がっています。WHOはまん延を防ぐ目安を70%としていますが、このラインに迫っています。
飼い犬に予防接種を受けさせていない場合、20万円以下の罰金の対象となります。生後91日以上の犬には早めに予防接種を受けさせ、その後は年1回の予防接種で免疫を補強します。居住の市区町村が行う集合注射、または動物病院で接種することができます。
獣医師の見解はー
ーー接種率が下がっている現状をどう感じていますか?アニホック動物病院グループ総獣医師長 藤野洋氏:なかなか接種率が上がってないという現実は僕らも認識しているので、70%以下にならないように努力をしなければいけないと思っています。いらっしゃる患者さんの中でも、何年間か(予防接種を)打っていなかったという話は時々聞きます。
ーー打たない理由は何だと思いますか?藤野洋氏:日本で狂犬病が1957年以降発生していないことが一番の理由かなと思ってまいす。私達(獣医師)も日本国内で実際の狂犬病の犬を見たことがない。そういったところで意識がかなり下がってきてしまっているのが原因だと思っています。
ーー感染はウイルスですか?それとも菌なんですか?藤野洋氏:狂犬病ウイルスです。
ーーワクチンによって100%抑え込むことができるんですか?藤野洋氏:100%とは言い切れないですが、ほぼ100%という致死率をほぼなくせる。感染はしますが死までは至らないように、ワクチンで予防できるということになります。
ーーワクチン代はいくらぐらいですか?藤野洋氏:犬の予防接種を市区町村でする場合は3000円前後になります。動物病院は自由診療なので少し値段の差はありますが、大体3000円前後で接種できると思っていただいていいと思います。
かまれた場合の対処法は
狂犬病流行地域で もし動物にかまれてしまった場合▼傷口は15分以内に、徹底して石鹸と水で洗う▼できるだけ早く医療機関を受診し、必要であればワクチンを接種する
日本でも、動物にかまれたら直ちに水で洗浄し受診するようにしてください。
アニホック動物病院グループ総獣医師長 藤野洋氏:ヒト用の狂犬病のワクチンを在庫として持っている病院は、町の病院ではほぼないと思いますので、大きな病院で問い合わせていただくことが必要になると思います。
弁護士 八代英輝:私は子どもの頃に犬を飼ってたんですけど、毎年接種すると「犬」って書いた色の違うシールをくれました。そのシールを家の前に貼っておかないと近所の人から厳しい目で見られるような時代だったんですけども、最近あまり見かけなくなりましたよね。
恵俊彰:義務付けられている予防注射の接種率が下がっているという状況を知っておくことが大事なのかもしれません。
(ひるおび 2024年2月13日放送より)