自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、野党の国会追及が激化している。自民党は全所属議員にアンケートを行ったが、野党陣営は「不十分」として、衆院政治倫理審査会(政倫審)の開催を要求したのだ。こうしたなか、岸田文雄首相(自民党総裁)が政倫審の実施に応じる意向を固めたと報じられた。自身の延命戦略なのか。自民党安倍派(清和政策研究会)幹部「5人衆」らの出席が焦点だ。
「先送りのできない課題に全身全霊で取り組む毎日だ」
岸田首相は14日、在職日数が864日に達し、自らが率いた宏池会(岸田派)出身の故鈴木善幸元首相と並んだ。前日夜、記者団に受け止めを問われ、こう語った。
国民の「政治とカネ」への不信感は根強い。
自民党は全所属議員にアンケートを行い、政治資金収支報告書への不記載があったのは85人(現職82人、選挙区支部長3人)、総額約5億7949万円だったと野党側に伝えた。
これに対し、立憲民主党の岡田克也幹事長は「何にカネが使われたのか説明が一切なく、極めて不十分な調査」などと批判し、攻勢を強めている。衆院予算委員会は14日午前、政治資金問題に関する集中審議を実施するが、とても収まらない情勢だ。
自民党内には、予算審議と引き換えに「政倫審開催やむなし」との声が出ており、岸田首相が政倫審を実施する意向を固めたと、朝日新聞が14日朝刊の一面トップで報じた。安倍派「5人衆」(=松野博一前官房長官、西村康稔前経産相、高木毅前党国会対策委員長、世耕弘成前党参院幹事長、萩生田光一前党政調会長)や、二階派(志帥会)の幹部らの出席を調整するという。
一方、安倍派からは、東京地検特捜部の捜査に応じ、刑事処分の結論も出ていることを理由に、否定的な声も出ている。
ある議員は「安倍派は閣僚や党幹部から切り捨てられ、事件の〝象徴〟となった。岸田首相は再び『スケープゴート』にする腹積もりではないか」と語る。
こうしたなか、岸田首相の最側近である木原誠二幹事長代理は13日、BS日テレの番組に出演し、9月の総裁選での岸田首相再選に期待感を示した。政治資金規正法改正では厳罰化の必要性を示唆しながらも、会計責任者と議員の双方に責任を求める「連座制」について、「すべての場合に政治家が責任を取らないといけなくなると、厳しい」と、消極姿勢だった。
一連の動きをどう見るか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「岸田首相は総裁選で続投するため、『減税』の効果や、外交成果などで支持率を高め、衆院解散の機会を見極めている。そのためには『政治とカネ』の問題の冷却時間が必要だ。政倫審実施に動き出したとすれば、時間稼ぎと政治資金規正法改正の本丸(連座制適用)を避ける意味もあるのではないか」と語っている。