能登半島地震は元日の午後に発生し、初詣客でにぎわっていた石川県内の神社にも大きな被害を与えた。県神社庁のまとめでは、所属する1867社のうち、少なくとも208社の拝殿や本殿などが被災した。奥能登地方では44社の被害が確認されており、再建に時間を要する神社もある。(野口恵里花)
約800年の歴史がある同県輪島市の 南志見 住吉神社。13日、28代目宮司の中川直哉さん(62)は、長男と片付けを行った。割れた窓ガラス部分をブルーシートで覆ったり、崩れ落ちた石などを片付けたりした。
神社には例年7月、能登伝統の巨大な灯籠「キリコ」が集まる。地域住民の心のよりどころだが、地震で昭和初期に建てられた拝殿は全壊し、鳥居や灯籠も倒れた。昨年末に雪で境内の松の大木が倒れ、元日は参拝客を午前中に制限しており、人的被害がなかったのがせめてもの救いだった。
中川さんは同神社のほか、近隣の15の神社の宮司を務めるが、ほとんどが全半壊した。一帯は断水が続き、氏子120世帯を含む住民は金沢市などに避難し、中川さんも妻、息子2人らと同市で避難生活を送っている。再建の見通しは見えない中、「復興には年単位の月日がかかるが、必ず再建したい」と誓う。
県神社庁によると、被害を確認できていない神社や、同庁に所属していない神社もあり、実際の被害はさらに大きいとみられる。担当者は「生活の安定が住民の喫緊の課題だが、その上で、ご神体の保護や、建物の補修の相談などを個別にしていきたい」と話す。
旧能登国の一の宮に位置づけられる 気多 大社(羽咋市)は建物被害こそ免れたが、例年は正月三が日で約20万人が訪れるのに対し、今年は1月の参拝者が10万人を下回った。年間約50万人が訪れる観光地でもある。宮司の三井孝秀さん(62)はドローンで撮影した神社の映像をSNSで連日発信しており、「神社は疫病や災害があった時にお参りし、心を落ち着かせてもらう場所。お宮が開いていることを知らせたい」と語る。
地震では仏閣も被害を受けた。県内の仏教系宗教法人のおよそ6割を占める真宗大谷派では全806軒のうち、少なくとも457軒の寺が被災した。輪島市の浄明寺は瓦がずれたり、亀裂が入ったりし、本堂は雨漏りが激しいという。副住職の 崖超 さん(45)は避難所の炊き出しボランティアを続けながら、「建物をそのまま使えるかは不明だが、建物が小さくなっても、この場で再建したい」と話している。