ロケット成功 宇宙開発の停滞を破る契機に

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発した大型ロケット「H3」の打ち上げがようやく成功した。停滞していた日本の宇宙開発を前進させる契機としたい。
新型のH3ロケットはエンジンの開発が難航した。打ち上げが度々延期された末、2023年3月に1号機を打ち上げたが、第2段エンジンが着火せずに失敗した。今回、2号機で雪辱を果たし、関係者は 安堵 しているだろう。
日本の基幹ロケットは世代交代の時期に差しかかっている。これまでの主力「H2A」は間もなく退役してH3に移行し、小型の「イプシロン」も、改良型「イプシロンS」へと引き継がれる。
ところが、H3は出だしからつまずいた。イプシロン6号機も22年に打ち上げに失敗した。また、イプシロンSは地上燃焼試験でエンジンが爆発するなど、このところトラブルが相次いでいた。
H3の成功により、「背水の陣」とされた危機的な状況は脱したと言えるのではないか。
前回のH3の失敗では、電気系統に不具合があったことが判明した。JAXAは、根本の原因として回線のショートや過電流など三つの可能性にまで絞り込んだが、一つには特定できず、三つの可能性すべてに対策を講じた。
過去には、ロケットの打ち上げが失敗すると、政府を中心とした原因究明が長引き、何年も打ち上げが中断することがあった。早期の打ち上げ再開を重視し、失敗から1年足らずで再打ち上げにこぎ着けたことは評価できる。
ただ、各国で新興企業が宇宙開発に乗り出し、ロケット開発のスピードは速まっている。今回の成功も、出遅れていた日本が、ようやく国際競争のスタートラインに立ったにすぎない。
H2Aは打ち上げの失敗が少なく、性能には定評があったが、価格が高いためビジネス面では競争力に乏しかった。H3は価格を約半分の50億円に抑えている。今後の衛星打ち上げなど、日本の宇宙産業を 牽引 してもらいたい。
衛星の打ち上げ市場で独走状態にある米スペースX社は、年間数十機というロケットを安定して打ち上げており、価格も低い。
日本も、30年代前半までに年30機の打ち上げを目指す戦略を描いている。うち20機は民間独自のロケットを想定しているという。
政府がJAXAに設けた1兆円規模の宇宙戦略基金などを活用し、新興企業のロケット事業の育成を強化することが重要だ。

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