横行するぼったくり、悪質飲食店の背後に準暴力団の影 「鳥貴族」かたり自店舗に誘導 深層 歌舞伎町

「客引きに案内された店について行ってしまうと、トラブルになります」
飲食店やカラオケなどが入居する雑居ビルが所狭しと並ぶ東京・歌舞伎町。靖国通り沿いの歌舞伎町交差点から新宿東宝ビルにかけて南北に伸びる通称「ゴジラロード」では、こんな注意喚起の放送が、ひっきりなしに流れている。
それでも、路上では通行人に声をかけるキャッチ(客引き)の姿が絶えることはない。安易について行けば放送の通り、思わぬ災難に見舞われることになる。
店内に「撮影禁止」の張り紙
「鳥貴族は満席で入れないから、系列店に案内しますよ」「2杯以上ならお得です」
昨年3~8月、ゴジラロードにある大手焼き鳥チェーン「鳥貴族」の店舗に入ろうとした客を自身らが運営する無関係な店に誘導し「ぼったくり」を繰り返していたとして、警視庁は今年1月、偽計業務妨害の疑いで、店の店長やキャッチら男女15人を逮捕。今月、店の経営に携わっていた中国籍の男2人を新たに逮捕した。
グループは「とりみち」「とりきち酒場」などの名称で、3店舗の飲食店を運営。キャッチは鳥貴族のロゴが入ったボードを持ち、無線で店内の状況を確認するそぶりを見せるなどして鳥貴族の関係者を装い、自分らの店に誘導していた。
店に入れば「飲み放題1200円」とうたっていたのを勝手に3980円に変更するなど、高額を請求される。捜査関係者は「『席料』『お通し』『年末料金』などといって料金を加算していき、3~4倍もの暴利をむさぼっていたようだ」と明かす。
店内にはメニューと値段は張り出されているものの、「撮影禁止」の張り紙も。捜査幹部は「張り出した料金と請求額に違いがあれば、詐欺罪に問われかねない。巧妙に客引きだけが、安い金額を言うよう徹底していたのでは」とみる。
店名変え営業か
警視庁暴力団対策課によると、これまでに逮捕した男女のうち、中国籍の男3人は準暴力団「チャイニーズドラゴン」の関係者で、店に出資していた。3店舗は毎月5千万円以上を売り上げており、一部は客引きに支払うほか、チャイニーズドラゴンにも流れた疑いがある。
グループの店舗が入る雑居ビルの住所と階を入力し、インターネットで検索すると、次々と違う店の名前が出てくる。口コミも〝被害〟を訴える声が並ぶ。「とりみち」だった店はその後「とりどり」になり、現在は看板に「とり二郎」とある。
グループが運営する店を巡っては、令和4年ごろから「週末料金や着席代までかかった」といった110番通報や相談が相次ぎ、悪評が立つたびに3カ月程度の間隔で店名を変えて営業していたとみられる。苦情は名前を使われた「被害者」である鳥貴族にも寄せられていたという。
グループは20~30人とみられ、若いメンバーが「名ばかりの店長」を務めていた。メンバーの出入りも激しく暴力団対策課は「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の1つの形態とみて、カネの流れや組織の実態解明を進めている。
歌舞伎町では悪質な客引きやぼったくり居酒屋、バーなどが後を絶たない。捜査関係者は「放送や看板による注意喚起を続け、悪質なものは摘発していく」と話した。

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