地域を守る職質のプロ、大阪府警から派遣 能登地震被災地に

家屋が倒壊した住宅街で、コンビニエンスストアの近くに1台の自転車が止めてあった。「倒れていない。誰か乗ってきたかな」。違和感があり、パトカーを降りると、店舗近くに男性がいた。「何をされているんですか?」と尋ねると、男性は「私の店なんです。被災直後に商品を取られたんです」と返した。店舗2階の事務所に寝泊まりし、店を守っていた――。【横見知佳】
「職質マイスター」府警で25人
能登半島地震の被災地で、地域の安全を守るため、府警の「職務質問指導マイスター」(職質マイスター)が活動している。府警に約7000人いる地域警察官のうち、地域部長に認定された職質マイスターは25人のみ。実地試験や後輩への指導力なども含めて選ばれる職質のプロだ。1月に派遣された2人に話を聞いた。
地域総務課の前山豊成(とよしげ)警部補(38)と竹山敬洋(たかひろ)巡査部長(42)は1月14~25日、石川県輪島市に派遣された。2人1組でパトカーに乗り、海沿いの河井町や山間部の三井町を回った。
大規模な火災が起きた河井町では、道に迷ったように廃虚となった街中をウロウロ歩く人たちが複数いた。父と母、その娘という3人に声を掛けると「このあたりに自分たちの店があったはずなんです」と絞り出すように話した。全て燃えてしまい、正確な場所が分からない様子だった。がれきから食器を探し出し、確かめるように道ばたに並べていた。
三井町では、民家からミカンを盗み出した容疑で、愛知県の男子大学生が1月5日、警察に現行犯逮捕されていた。「見慣れない人がいる」「他県ナンバーの車が止まっている」など、不安を感じた住民らから110番も相次いでいた。
空き巣が心配で、倒壊した家屋の前で車中泊をしていた70代くらいの男性もいた。家族を避難所に避難させ、1人家の前に残っていた。「全国の警察官が回っているので安心してほしい。エコノミークラス症候群にならないよう、体に気をつけてくださいね。何かあったら110番してください」と声を掛けた。
地域を回って声を掛けるのは、怪しい人物だけではない。どこに誰が避難しているのか、情報を集めながら公民館や倉庫、ビニールハウスなどを回り、被災者に声を掛けた。制服姿の警察官が姿を見せることで、「遠いところからよく来てくれた。見回ってくれたら安心する」と喜ばれた。
災害便乗の刑法犯も
警察庁によると、災害に便乗した空き巣や避難所の置き引きなど、石川県内の刑法犯は2月14日までに47件確認されている。前山警部補は「空き巣などの報道を見て不安を訴える人が多かった。被災者がさらに犯罪被害者になるのを防ぎたいという気持ちでパトロールした」と語る。竹山巡査部長は「制服によって安心してもらえるということを実感した。次に続く同僚に警察官が被災地を巡回する意義を伝えたい」と話した。

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