愛知県で今、中高一貫校ブームが起きている。2025年度、県立高に中学校を併設した県内初の公立一貫校が一気に4校誕生するのに続き、26年度はさらに5校設置される予定だ。こうした動きに、ライバルでもある県内の私立一貫校関係者からは「生徒を取られる」と警戒の声も上がる。
25年度に中高一貫校化されるのは、愛知県立の明和(名古屋市)、刈谷(刈谷市)、半田(半田市)、津島(津島市)の4校。全問選択式の適性検査と面接で選抜する。
昨秋に開かれた明和高の付属中学の説明会には定員計1500人に対し、約2500人が応募し、急きょ回数を増やした。
少子化が進む中、愛知県は「県立高全体で魅力化、特色化を図ろう」と21年から県立高校長や各地の教育委員会関係者らが県立高の将来像について議論。行き着いた先が中高一貫校化だった。飯田靖教育長は「選択肢の幅を増やす観点からも一つの突破口になれば」と狙いを話す。
こうした動きに中学受験業界は即座に反応した。県内各進学塾では「公立中高一貫校受検コース」などを新設。生徒募集チラシには「全国の公立一貫校の問題を分析し、実績があります」などの文字が躍る。
一方、ある県内私立一貫校の教員は「危機感を持っている。管理職からは『負けないように』と言われている」。「本音では作ってほしくない。高校の生徒を先に取られては困る」と明かす私立関係者もいる。【川瀬慎一朗、加藤沙波、酒井志帆】