「もう言い飽きたからこれで最後にしたいのだけれど、岸田文雄氏は首相としての資質を欠いている。私はそう結論している」
朝日新聞の高橋純子編集委員は、記者コラム「多事奏論」(2024年2月17日)で右のように記している。何の説得力もないコラムを読み、たじろいだが、私は次のように言い返したい。
「もう言い飽きたからこれで最後にしたいのだけれど、朝日新聞は報道機関としての資質を欠いている。私はそう結論している」
高橋氏のコラムを何度か読んだが、被災者に寄り添おうという岸田首相の行動にケチを付けたいとしか思えなかった。端的に感想を言えば、「情悪」の一言に尽きる。とにかく、岸田首相が嫌いで、嫌いで仕方がないとの一念で書かれているように感じた。ポストが赤いのも岸田首相のせいであると言い出しかねない勢いだ。
「素にして頓(とん)にして狂(きょう)」と、岸田首相を嘲笑うが、その言葉はそのまま自身に返ってくるのではないか。
事実を報道すること、あるいは事実に基づいて国家権力を批判することが、報道機関の責務と言ってよい。だが、感情の赴くままに罵倒することは報道機関の仕事ではない。それはプロパガンダの類である。高橋氏のコラムは次のように締めくくられている。
批判するなら、根拠は明確に
「岸田頓珍漢物語は、演説終盤『総裁任期中に改正を実現したい』と宣して大団円を迎える。日本国憲法25条『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を一日も早く被災地で回復させることに全力を注ぐべき首相が、憲法改正に前のめる。暗にして愚。もう言い飽きたけどやっぱり言う。首相としての資質を全く欠いている」
理解困難な罵詈(ばり)雑言に聞こえる。憲法改正を党是とする自民党の総裁が改憲を唱えることに、何の疑問があるのだろうか。護憲を唱える自民党の政治家がいれば、それこそ羊頭狗肉と批判されて然るべきだ。
私は岸田首相を英邁な宰相とは思わない。だが、ここまで愚弄することが正当とも思わない。批判したいのであるならば、その根拠は読者の多くが納得できるよう、明確であるべきだ。
世の中には「宇宙からの交信がきた」などと謎のメッセージを語る人々が存在する。聞こえているのだから致し方ないが、私にとっては無意味な世迷言にしか聞こえない。
朝日新聞の「多事奏論」を読んで感じるのは、そういう人々の言葉と酷似しているということだ。一言で言えば、論理性が欠如していて意味不明なのである。 =おわり
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。大和大学准教授などを経て、現在、一般社団法人日本学術機構代表理事。専攻は政治哲学。著書に『いい加減にしろ!』(ワック)、『日本再建を阻む人々』(かや書房)、『興国と亡国―保守主義とリベラリズム』(同)など多数。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。