理不尽な要求や暴言などを職員が受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防ぐため、東京都品川区は職員の名札をフルネームから名字だけとし、顔写真の掲載も廃止した。窓口業務をする職員が来庁者に名札を見られ、「インターネット上に名前をさらす」などと言われた事例が複数あり、職員のプライバシー保護に配慮する必要があると判断した。3月末までを試行期間とし、業務上問題がなければ2024年度から本格導入する。【加藤佑輔】
区人事課によると、新たな名札は、フルネームと顔写真の掲載を廃止した代わりに、名字のふりがなやローマ字表記のサイズを大きくして見やすくした。従来の名札は、出退勤を記録するカードとして引き続き利用しているという。
区は、昨年7月に職員が匿名で意見や要望を投稿できる専用フォームをウェブ上に設置した。投稿の中で、窓口業務をする職員が来庁者とトラブルになった際、「名前と顔を覚えた。ネットにアップする」などと言われた事案が複数あったことが発覚。「職員が安心して働ける環境をつくる必要がある」と判断し、1月からフルネーム表記などを取りやめている。
区人事課の担当者は「実際にネット上に職員の名前を書かれたケースはないが、トラブルを未然に防ぐための対応が必要だと考えた」と話した。
同様の取り組みは全国の自治体で広がっており、福井市や岡山市などでも名字のみの名札が導入されている。