石綿給付金除外訴訟で和解成立 遺族側に全額支払い 神戸地裁

アスベスト(石綿)で健康被害を受けた建設労働者を対象とする国の給付金制度を巡り、本人が死亡した場合の給付を一部の親族に限るのは不当だとして、中皮腫で死亡した兵庫県の男性(当時78歳)のめいら遺族3人が国に計1430万円の損害賠償を求めた訴訟は11日、神戸地裁(河本寿一裁判長)で和解が成立した。国が慰謝料などとして全額を支払い、謝罪する内容という。
給付金は、中皮腫や肺がんなどの病態に応じて550万~1150万円を支払う制度。本人が死亡した場合には最大1300万円を遺族に支給するが、請求できるのは配偶者や子、両親、兄弟姉妹らに限られている。
今回訴えた遺族側によると、受給手続きを進めていた男性の兄が死亡し、請求できる親族がいなくなった。めいらは対象外だが、賠償請求権を持つ相続人として訴えを起こした結果、国側が応じる形で和解が成立したという。めいらの代理人弁護士は「対象外の遺族による訴訟で和解するのは初めて」としている。
男性は1966~2006年ごろ、建設現場で電気工事の作業に従事した。19年に石綿による悪性胸膜中皮腫を発症し、翌年に死亡。労災認定されていた。
和解成立を受け、遺族側は「声を上げなければ泣き寝入りしていたかもしれない。諦めなくてよかった」とコメント。厚生労働省は「今後も早期解決に向け、和解を進める」としている。【中田敦子】

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