運転期間が40年を超える原発として国内で初めて再稼働した関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)の周辺住民らが関電に運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、大阪高裁(長谷川浩二裁判長)は15日、申し立てを却下した令和4年12月の大阪地裁決定を支持し、住民側の即時抗告を棄却する決定を出した。
平成23年の東京電力福島第1原発の事故後、原発には厳しい新規制基準が設けられ、運転期間は「原則40年」とされた。原子力規制委員会が審査で認めた場合のみ最長60年まで延長できる。美浜3号機は関電の経年劣化対策を経て、28年11月に延長運転が認められた。
令和4年の地裁決定は、美浜3号機が新規制基準を満たし、運転期間が40年を超えても「重大事故が生ずる具体的危険性があるとは認められない」と指摘。その他の争点についても、関電や規制委の判断に「不合理な点は認められない」と結論付けた。
即時抗告審で住民側は、新規制基準では原発敷地の「極めて近くに活断層がある場合、特別な考慮が必要」と規定されているのに、それがなされていないとして規制委の審査の誤りを改めて主張した。
事故発生時の避難計画の不備も訴えていたが、審理終了後の今年1月に能登半島地震が発生したことを受け、「(計画通りの避難は)地震による原発事故時に実行できない」とする書面を追加で提出していた。
原発を巡っては昨年5月、60年を超える原発の運転延長を可能にする法律が成立。政府はエネルギーの安定供給と脱炭素の実現を目指し、「原発回帰」を進めている。