名古屋市立中学1年の斎藤華子(かこ)さん(当時13歳)の自殺を巡り「いじめの予見や発見はできなかった」として市側の安全配慮義務を認めなかった19日の名古屋地裁判決。華子さんの父信太郎さん(52)は記者会見で「納得できない」と憤りをあらわにし、娘には「ごめんねと伝える」と声を絞り出すように語った。
「請求を棄却する」。午後3時、法廷の弁護人席に着いた信太郎さんは、斎藤毅裁判長の言葉を身じろぎもせず聞いていた。
判決は、子どもの不安や悩みを把握するために実施したアンケート結果など、学校のいじめ予防の体制について検討。市の再調査委員会が、校内のいじめ対策委員会が形骸化していると指摘していたことから「いじめを予防し、発見するための体制には改善の必要がある」とした。
その上で、「いじめ予防の体制を準備できていたとしても、いじめを予見したり、発見したりすることはできなかった」と結論付けた。
信太郎さんが裁判所に求めてきたのは、責任の所在を明らかにし、再発防止につなげることだった。「理解してもらえず落胆した。子どもに寄り添ってほしいという親の声がなぜ届かないのか」と苦しい胸の内を語った。
ただ、ここで市教委や学校への責任追及をやめるつもりはない。「(追及が)足りないなら(他の人と)手を取り合って、大きな声にしていくしかない。おかしいものはおかしいと声をあげる」と力を込めた。
判決を受け、報道陣の取材に応じた名古屋市の河村たかし市長は「親の悲しみだけが残るのはとても残念なこと」と述べた。自身が掲げてきた公約「一人の子どもも死なせないナゴヤ」に触れ「(公約が)実現できず大変申し訳ない」と陳謝した。【田中理知、川瀬慎一朗】